四十肩の痛みは抑えられる?症状を悪化させないための対処法
洗濯物を干す、服を着るといった動作をしたときに、肩に急激な痛みが走り、腕が上がらなくなる四十肩。焦って無理矢理肩を回したり、「そのうち治るだろう」と放置したりすると、痛みのあまり夜眠れなくなるほど悪化してしまうことも...。
ここでは、四十肩が起こる原因や、四十肩になってしまったときの対処法をご紹介します。
四十肩の原因と症状は?
肩は、骨や関節のほか、筋肉、腱(けん)、靭帯(じんたい)、関節の動きを良くする滑液包(かつえきほう)といった組織から成っており、体の中でも可動域が広い部位です。これらの組織が炎症を起こした状態を、医学的に「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」といいますが、その俗称である「四十肩」という呼び名のほうが広く知られているでしょう。
肩関節周囲炎は中年以降に多い疾患で、40代で発症すると四十肩、50代で発症すると五十肩と呼ばれます。
加齢によって、肩の筋肉や腱の柔軟性が失われてこわばることが、四十肩の一因といわれています。しかし、はっきりとした原因はわかっていません。両方の肩が同時に痛み始めることはあまりありませんが、左右どちらかの肩に発症した後、もう一方の肩が痛み始めるケースも多く見られます。
四十肩になった後、日常生活で痛みが出やすいのは、腕を持ち上げたり、腕を外側や背中側に回したりするような動作です。
<四十肩の痛みが出やすい日常動作>
・洗濯物を干す、取り込む
・髪を洗う
・髪を結ぶ
・吊り革をつかむ
・Tシャツなど、頭からかぶるタイプの洋服を脱いだり、着たりする
四十肩になりやすいのは、肩関節や肩甲骨を動かす機会が少なく、肩の可動域が狭くなりがちな人です。運動不足の人や、同じ姿勢で長時間のデスクワークをする人などは、注意が必要でしょう。
このほか、糖尿病や脂質異常症、甲状腺疾患などを患っている人も四十肩を発症しやすく、一度発症すると治りにくいといわれています。
四十肩の発症から回復までの流れ
四十肩は、これといった前兆がなく、左右どちらかの肩が痛み始め、次第に悪化していきます。
発症後は、次の3つの段階を経て症状が進行します。
1. 急性期
発症から約2週間を急性期といい、腕を動かすと突然強い痛みを感じます。安静時や就寝時の寝返りなどでも痛みを伴い、眠れないほどズキズキと痛むこともあります。さらに、肩を動かしたとき以外も、二の腕や指先まで痛みやしびれを感じる場合があります。
2. 慢性期
慢性期は、急性期に感じた痛みは軽減するものの、鈍い痛みへと変わり、肩や腕を動かす何気ない動作が苦痛になります。これは、急性期に生じた炎症によるもので、髪を洗ったり、服を着替えたりするなど日常生活に支障が出ます。慢性期は、半年ほど続くといわれています。この期間に適切なリハビリを行い、肩を動かせる範囲を広げていくことが大切です。
3. 回復期
回復期は、慢性期に肩を動かせずにいたことが原因で、肩周りの動きが鈍くなります。しかし、炎症は次第に落ち着いて、痛みの範囲が狭まり、痛みを感じる場所も特定できるようになります。ただし、慢性期と回復期を繰り返す人もいるため、楽観は禁物です。
専門医から指導を受けリハビリを積極的に行うことで、早期回復が期待できます。病期に応じた適切なリハビリを行わなければ、運動制限が解除されない場合がありますし、重症例では手術が必要になることもあります。
四十肩になってしまったら...痛みを軽減する姿勢
四十肩になってしまったときは、慢性期や回復期に正しい姿勢を保ち、炎症を悪化・再発させないことが全治への近道です。ここからは、日常生活において、肩に負担をかけずに過ごせる姿勢をご紹介します。
仕事中や休憩中の姿勢
仕事中や休憩中に意識したいのは、両脇を軽く空けること。両脇を閉じて両腕を下にぶらんと下ろす姿勢は、腕の重みが肩にかかって圧迫する原因になります。デスクワークなら、両ひじをひじ掛けに置くなどして、肩の負担を軽減しましょう。
就寝中の姿勢
寝るときも、体から腕を少し離すようにします。枕の位置が高すぎると首や肩周りの筋肉が引き伸ばされ、反対に低すぎると筋肉を緊張させてしまうため、首のラインがまっすぐになるように高さを調整します。痛いほうの肩の下にタオルを敷き、寝具から肩が浮かないように支えを作るといいでしょう。
痛みが強いときは、肩関節が内側に向くよう、横向きに寝るのもおすすめです。痛いほうの肩を上にして横になったら、上の脇にタオルや枕を挟むか、抱き枕を抱えて肩が下がらないようにします。
四十肩の悪化を防ぐには、すみやかな治療がカギ
四十肩は、発症から回復まで約半年から9ヵ月といわれていますが、重症の場合は3年ほどかかる場合もあります。痛みを放置したり、無理に動かしたりして、症状を悪化させないようにしましょう。
また、四十肩ではなく、自然治癒が困難な肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)の場合もあります。肩に痛みを感じたらできるだけ早く医療機関を受診し、治療をスタートすることをおすすめします。