アルコールが女性の健康にもたらす影響を徹底解説【前編(全2回)】
職場の方やご友人と盛り上がる場面ではもちろん、リラックスしたいひとり時間でも、お酒をたしなむ女性は多いのではないでしょうか。
広く知られているようにアルコールのとりすぎは身体に影響を与えることがあり、特に女性はお酒との付き合い方に気をつけたいところです。
職場の方やご友人と盛り上がる場面ではもちろん、リラックスしたいひとり時間でも、お酒をたしなむ女性は多いのではないでしょうか。
広く知られているようにアルコールのとりすぎは身体に影響を与えることがあり、特に女性はお酒との付き合い方に気をつけたいところです。
今回は、アルコールによって女性の身体にもたらされる影響をお伝えします。
おいしくお酒を楽しみながら、健康的な未来を築くために、ぜひお役立てください。
女性は男性よりもアルコールの影響を受けやすいのは本当?
結論から申し上げますと、女性のほうが男性よりもアルコールの影響を受けやすいのは事実です。
では、なぜ男女で違いが生まれるのでしょうか。それは、アルコールを分解する力に差があるためです。
女性に備わっているアルコールの分解能力は、男性の1/2~2/3程度しかありません。男性と比べると体内の水分量が少なく、皮下脂肪が多い身体の構造上、女性はアルコールをあまり分解できないといわれています。
参照元:東京都保険医療局『女性は男性よりお酒に弱いってホント?』
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/joshi-kenkobu/insyu/01/
女性ホルモンの変化
女性の体内にアルコールが入ると、女性ホルモンの一種である"エストロゲン"のはたらきが変化します。
エストロゲンは、妊娠に備えてふっくらとした身体を作ったり自律神経を整えたりと、女性の心身の健康に貢献するホルモンです。しかしアルコールが体内に入ってくると、エストロゲンはアルコールを分解する際に邪魔をする一因となるのです。
アルコールの分解が妨げられると身体にも悪影響を及ぼしますから、特にエストロゲンの分泌量が多い若い世代の女性は、注意が必要かもしれません。
以下の記事では、女性ホルモンや更年期について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
女性ホルモン「エストロゲン」とは?更年期もセルフケアで快適に
お酒の種類ごとに女性に与える影響に変化はあるのか
よく「日本酒は健康維持に役立つ」「赤ワインに含まれるポリフェノールは血糖値を下げるから身体に良い」と耳にすることがありますが、一概にそうとは言えません。
言ってしまえば、アルコールは身体にとって毒です。良い成分が含まれているお酒を飲んだとしても、肝臓には負担がかかります。
お酒は、胃を通った時点で胃液によって分解されることがほとんどです。そうなるとお酒に含まれる健康に役立つ成分は、ほんの少ししか吸収されません。得られるメリットよりもデメリットのほうが大きくなりますから、健康的に楽しみたいのであれば、お酒の種類にこだわるのではなく、飲み方を工夫していきたいところです。
女性がお酒を控えたほうがよいタイミング
生涯を通じてホルモンバランスが変化する女性には、アルコールの摂取を控えたほうがよい時期が存在します。
排卵・月経前
排卵前には、エストロゲンの分泌量がピークに達します。先ほどお伝えしたように、エストロゲンにはアルコールの分解を妨げるはたらきがありますから、この時期の飲酒は避けておくのがベターです。
排卵期を経て月経が近づくと、エストロゲンの分泌量が徐々に減っていきます。「それなら、お酒を飲んでも大丈夫かな?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、可能であれば月経前もお酒を控えるのが理想的です。
というのも、月経前はPMS(月経前症候群)とよばれる身体的・精神的な不調が表れる可能性があるためです。PMSでは、むくみや腹痛、情緒不安定などの症状がみられます。月経が始まるとともに消失していきますが、人によってはつらい精神症状に悩まされることも少なくありません。
PMSによる精神的な不調が起きているとき、不安やイライラをかき消すためにお酒を飲むと、それが習慣化してしまうおそれがあります。こうなった場合、後述するような健康状態を悪化させるリスクが高まるため、月経前の飲酒は控えるのが望ましいです。
妊娠・授乳中
言わずもがなですが、妊娠中の飲酒は厳禁です。妊婦の方の体内にアルコールが入ると、生まれてくる赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがあります。たとえば、脳の障がいや顔の奇形などが挙げられます。
妊娠中の飲酒によって生じた影響は、生まれてくる赤ちゃんが一生悩みつづける種となるかもしれません。おなかの中にいる赤ちゃんは"20歳未満"であることを心に留め、たとえひと口でも飲酒は控えるのが鉄則です。
また出産後は「ようやくお酒が飲める!」と、アルコールに手が伸びてしまいがちですが、授乳中であれば避けておきたいところです。授乳中の女性が口にしたアルコールの一部は、母乳に移行するといわれています。その場合、当然赤ちゃんの体内にもアルコールが入ることとなりますから、なんらかの影響が及ぶとも考えられます。
更年期
更年期の女性は、お酒を絶対に飲んではいけないわけではありません。しかし、「イライラする」「なんだか気分が落ち込む」など、更年期による精神的な不調に悩まれている方は、アルコールとの付き合い方を見直すのが賢明です。
更年期になると、ホルモンバランスの崩れがトリガーとなり、情緒不安定な状態に陥ることがあります。精神的にゆらぎやすい時期にお酒を飲むと、こうした症状が悪化するかもしれません。
ご自身で気持ちをコントロールするのが難しい場合は、アルコールの沼にはまってしまうリスクが高まります。若いうちから心が不安定な状態になっていた方や、普段から物事に一意専心で取り組む傾向にある方は、お酒のたしなみ方を考えるのがベターです。
アルコールの摂取によって女性に起こりうるリスク
新型コロナウイルスの流行が落ち着いてからは、以前のようにお酒の席が増えて親しい相手と楽しめる機会が戻ってきました。会話が弾むとついお酒が進み、いつもの倍以上飲んで記憶をなくしてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、このような状態になるまでアルコールを摂取すると、女性の身体は悲鳴を上げ、健康をおびやかすリスクが高まると考えられます。
アルコール依存症
飲酒を続けるとアルコール依存症になる可能性があります。長期間にわたってお酒を飲んでいる女性であれば、どなたでも発症しうる精神疾患です。男性と比較すると女性のほうがアルコールに依存しやすく、かつ症状が重くなる傾向にあります。
アルコール依存症を発症した場合、お酒を欲する気持ちが我慢できなかったり、飲酒量の調節が難しくなったりする症状が表れます。
摂食障害
アルコール依存症に罹患すると、同時に摂食障害を併発する場合があります。
摂食障害は、食事に関する異常な行動がみられ、心身ともに影響が及ぶ病気のことです。食事がとれずに体重が著しく減ってしまう、また歯止めがきかずに食べつづけてしまうなど、さまざまな症状が表れます。
体重や体型を正常にとらえられなくなり、自身の醜さにストレスを感じるがゆえに、こうした症状を引き起こすのです。この影響で栄養失調や臓器障害などが起こり、最悪の場合は命を落とす結果となります。
うつ症状
うつ症状も、飲酒によって女性に起こりうるリスクの一つです。アルコールがうつ症状を引き起こすのは、さまざまな要因が絡んでいると考えられています。
アルコールの摂取によってうつ症状を引き起こす要素
- ストレスによる合併
- 長期間にわたる大量の飲酒
- うつ症状を緩和するための飲酒による依存
- 断酒によって生じる離脱症状
うつ症状が起こると「気持ちを楽にしたい」「眠りにつきたい」といった理由からお酒に手が伸びてしまう可能性があります。ストレスや不安から逃れたい気持ちで飲酒量が増え、ひいてはアルコール依存症を発症するかもしれません。
乳がん
「飲酒によって、がんに罹患するリスクがある」という話をご存じの方も多いのではないでしょうか。なかでも、女性が発症する可能性が高まるのは、乳がんです。
乳がんの発症には、女性ホルモンの減少や肥満、運動不足などさまざま要因が関係しており、お酒の飲みすぎもその一つです。多量のアルコール摂取はエストロゲン濃度を上昇させるといわれており、過剰なエストロゲンが乳がんの発症にも関わっていることが指摘されています。
乳がんが進行すると、がんが肺や脳、骨などに転移するおそれもあるため、アルコールの摂取量に気をつけながらお酒を楽しむのが理想的です。
女性がお酒を飲むときのポイント
お酒は大人の楽しみの一つです。とはいえ上記でお伝えしたように、健康を損なうリスクもありますから、上手な付き合い方を身につけたいですね。
本項では、女性がお酒を飲むときに気をつけたい3つのポイントをお伝えします。
自分が飲めるお酒の量を把握する
まずは、ご自身が飲めるお酒のキャパシティを知ることが大切です。はじめからキャパシティを把握するのは難しいので、お酒を飲むときに少しずつ適量を見極めていくことをおすすめします。
ここで注意していただきたいのが、飲み慣れてきたときの飲酒量です。お酒を飲みつづけると、以前よりも強くなったように感じることがあります。しかし実際には、強くなったのではなく"慣れただけ"で、アルコールの分解能力が変化したわけではありません。飲酒量がキャパシティを超えると、依存するリスクも高まります。
ご自身が飲めるお酒の量を把握し、"ほろ酔い程度"で楽しむのがポイントです。
肝臓を休める日を設ける
肝臓を休める日、つまり休肝日を設けることも、女性がお酒を楽しむときのポイントの一つです。
目まぐるしい日々を過ごすなかではストレスが溜まることもあるかもしれません。気持ちを落ち着けるため、一日の終わりにお酒をたしなむ女性もいるのではないでしょうか。しかし、それを毎日繰り返すのは、あまり好ましくありません。
アルコールを毎日摂取すると、健康がおびやかされるリスクがぐんと高まってしまいます。くわえて、集中力の低下から失くし物の増加などのトラブルが生じる可能性もあります。
こうした事態を避け、そしてアルコールを分解する肝臓への負担を減らすためにも、週に2~3日程度は休肝日を設けるのがベターです。
アルコールによって不足しがちな栄養素を補う
アルコールの摂取によって吸収が妨げられた栄養素を補うことも、大切です。
アルコールの分解に不可欠なビタミンB1は、お酒を飲みすぎると体内から失われてしまいます。ビタミンB1の不足は身体の不調につながりますので、健康を維持するためには都度補給する必要があります。
また、日頃からお酒をたしなむ場合は、ビタミンCも積極的に摂取しておきたいところです。というのも、ビタミンCにはアルコールの影響を弱める効果が認められているためです。
お酒を飲んだ状態の身体は、こうしたビタミンを吸収しにくくなっているため、お酒を楽しむときにはビタミンB1が含まれるレバーやカツオ、そしてビタミンCが含まれる野菜や果物を取り入れるのがおすすめです。
お酒を健康に楽しみたい女性の味方となるサプリメント
上記で挙げたような食材が苦手な方は、サプリメントで栄養を補填するのはいかがでしょうか。
お酒は味の濃い食事とともに楽しむことが多いため、飲酒時には栄養バランスが偏りがちです。そんなときでもサプリメントで補給できれば、楽しくお酒を満喫できるはずです。
サプリメントで補いたい栄養素としては、ビタミンB1をはじめとするビタミンB群やビタミンC、亜鉛などが挙げられます。これらの成分は、アルコールの分解を助けてくれるほか、身体の巡りや活気あふれる毎日をサポートしてくれます。
ただしサプリメントで栄養素を補填するときには、食事にも気を配りたいところです。サプリメントは、あくまでも"手助け"をしてくれるものであると心に留め、栄養バランスのとれた食事を意識しながらお酒をお楽しみください。
アルコールは女性の心身に影響を与える!飲酒の仕方を見直して健やかな毎日を送ろう
今回は、アルコールが女性にどのような影響を与えるのかをお伝えしました。
女性は、男性と比べるとアルコールの影響を受けやすい傾向にあります。アルコールを分解する力が弱いことにくわえて、女性ホルモンが分解を妨げてしまうためです。
また女性の場合、アルコールの摂取によりメンタルの不調や乳がんを発症するリスクがあるといわれています。特に更年期の女性は、精神的にゆらぎやすい時期ですので、症状が悪化するおそれがあります。
いつまでも健康に過ごすためにも、今日からお酒との付き合い方を見直してみませんか?
後編の記事は、こちらからご覧ください。
アルコールが女性の肌や髪にもたらす影響を徹底解説【後編(全2回)】
この記事を監修した人
赤城 一郎(あかぎ いちろう)医師
医学博士
専門分野:消化器科
東京ミッドタウンクリニックに勤務。2001年日本医科大学卒業。日本医科大学付属病院消化器外科にて勤務開始。2009年に日本医科大学臓器病態制御外科学大学院を修了し、医学博士号を取得後、渡米。2010年 米国国立癌研究所(US National Cancer Institute/ NIH)にて勤務。2015年 日本医科大学多摩永山病院外科医局長を経て現在に至る。日本外科学会指導医・専門医・認定医。日本肝臓学会指導医・専門医。日本消化器病学会指導医・専門医など。