【医師監修】逆流性食道炎を本気で治すための、症状レベル別完全ガイド

東京ミッドタウンクリニック(東京・六本木) / イーク表参道
古川 真依子(専門分野:消化器内科・内科)
「胸のムカムカが治まらない」「酸っぱい液体がのどまで上がってくる......」。
こうした不快な症状に、日々悩まされていませんか?
近頃、話題になっている逆流性食道炎は、高齢者がなりやすいといわれていますが、過食の方やストレスの多い方など、実は若い人のあいだでも増えている症状です。
「市販薬を飲めばなんとかなる」と軽く考えがちですが、放置すると食道の粘膜が傷つき、生活の質を大きく下げてしまいます。この記事では、消化器内科医師・古川真依子先生監修のもと、逆流性食道炎の根本原因から、ご自身で今すぐ始められる食事・生活習慣の改善策、そして病院で行うPPI(プロトンポンプ阻害薬)や内視鏡などの専門的な治療法までを徹底解説します。
あなたの症状に合った具体的な治し方を一緒にチェックしていきましょう。
※本記事は、2019年7月16日公開「逆流性食道炎は何が怖い?症状や治し方について」を更新したものです
逆流性食道炎とは?症状レベルと粘膜で起こる本当の怖さ

逆流性食道炎とは、胃酸が食道へ逆流することによって、食道の粘膜に炎症が起きてしまう病気です。単なる胸やけと見られがちですが、実は食道の粘膜で深刻なダメージが進行している可能性があります。ここでは、ご自身の症状レベルと、体の中で何が起きているのかを正しく理解しましょう。
あなたはいくつ当てはまる?逆流性食道炎セルフチェック
まずは、普段感じている不調が逆流性食道炎によるものか、以下のリストでチェックしてみてください。
- 胸がムカムカする(胸やけ)
- 酸っぱい液体が口まで上がってくる(前かがみになった時などに、酸味や苦味のある胃液が喉や口の中まで逆流する感覚がある)
- みぞおちのあたりが痛む「シクシク」「チクチク」といった痛みを感じる
- 喉の痛みや咳き込みが続く
- 風邪ではないのに咳や喉の違和感が出ることがある(胃酸が喉まで上がり炎症を起こすことがある)
- 虫歯ができやすい・口臭が気になる(逆流した強力な胃酸によって歯が溶けたり、口内環境が悪化することがある)
これらの症状は、食後はもちろん、空腹時や強いストレスを感じたときにも現れやすいため注意が必要です。
放っておくとがんのリスクも?「粘膜」の変質と進行度
胃酸は食べ物を消化するために分泌される、非常に酸性度の高い液体です。胃の壁は酸に強い構造で守られていますが、胃の上にある食道はこの胃酸に対してとても弱い性質があります。そのため、逆流が慢性化すると、食道の粘膜は火傷のような状態になり、以下のように悪化していきます。
軽症(びらん):
食道の粘膜が胃酸で赤くなり、少し荒れている状態です。
中等症(潰瘍):
炎症が繰り返し起きることで、粘膜の傷が深くなったり広がったりしている状態です。
重症(バレット食道):
長期間の炎症により、食道の粘膜細胞が変質してしまった状態です。この段階まで進むと、食道がんのリスクが高まるといわれているため、決して放置してはいけません。
逆流性胃炎はなぜ起こる?3大原因「筋肉・胃酸・腹圧」

そもそも、なぜ本来逆流するはずのない胃酸が上がってきてしまうのでしょうか。胃と食道のつなぎ目には下部食道括約筋という筋肉があり、正常であればこれがしっかりと閉じて、胃酸の逆流を防いでいます。しかし、主に以下の3つの原因によって、この仕組みが正しく行われなくなります。
- 下部食道括約筋のゆるみ(筋肉の問題)
- 胃酸の過剰分泌(胃酸の問題)
- 腹圧の上昇(圧力の問題)
まず、加齢によって筋力が低下すると、どうしても逆流を防ぐ力が弱まります。また、アルコールには筋肉を緩める作用があるため、よくお酒を飲む方はこの括約筋が緩みやすくなります。さらに、早食いや大食いをすると、消化のために胃酸が急激に分泌され、胃の中が酸でタプタプの状態になります。脂っこい食事やストレスも胃酸を過剰に分泌させる大きな要因です。
また、下記のように胃が外から物理的に圧迫されると、中身が押し出されて逆流します。
- 食べてすぐ横になる
- 肥満:内臓脂肪が多い
- 便秘:腸が詰まると行き場を失ったガスや内容物が胃を圧迫し、下から突き上げる形で逆流を引き起こすことがある
【セルフケア編】今日から実践!逆流性食道炎の治し方・改善策
一度緩んでしまった下部食道括約筋を薬やトレーニングで元に戻すことはできませんが、諦める必要はありません。胃酸の逆流が起きにくい生活習慣を心掛けるだけでも、症状は改善されます。ここでは、今日からすぐに始められる具体的な対策をご紹介します。
何を食べる?食事で改善する3つのルール
食事面では、胃酸の分泌を過剰にしないメニュー選びと、胃に負担をかけない食べ方が重要です。次の3つのルールを理解しましょう。
ルール1:避けるべき食品リスト
以下の食品は、胃酸の分泌を促進したり、下部食道括約筋を緩めたりする作用があるため、症状がつらい時は極力控えましょう。
脂っこい食事
揚げ物、バラ肉、カルビなどの脂肪分が多い肉
刺激物や酸味が強いもの
柑橘類、香辛料、酢など
甘いもの
チョコレート、ケーキなど
飲み物
アルコール、炭酸飲料、コーヒー/カフェインなど
ルール2:積極的に摂りたい食品リスト
胃の中に留まる時間が短く、消化の良いものを選ぶのもポイントです。
タンパク質
鶏むね肉、ささみ、白身魚、豆腐など
その他
キャベツ、大根/大根おろし、うどん、おかゆなど
ルール3:食べ方の黄金律
何を食べるかと同じくらい、どう食べるかが大切です。以下の3点を意識しましょう。
腹八分目
満腹になるまで食べると胃の内圧が上がり、逆流しやすくなります。
よく噛む
ゆっくり噛んで食べることで唾液の分泌が促され、食道の酸を中和してくれます。早食い防止にもなります。
食後2〜3時間は横にならない
食べてすぐに寝転がると、重力で胃酸が逆流します。就寝前の食事も控えましょう。
睡眠・服装・ストレス|日常の「ちょっとした工夫」が再発を防ぐ
寝ている間の逆流を防ぐには、バスタオルなどを布団の下に入れるとよいでしょう。上半身全体が15〜20cmほど高くなるように調整してみてください。胃の形状を考慮すると、体の左側を下にして寝ると逆流が起きにくくなります。
また、ベルトをきつく締めたり、ガードルや着圧下着などを着用したりすると、腹圧が上がり逆流の原因になります。症状がある時は、お腹周りがゆったりとした服装を心がけましょう。
さらに、女性の場合、生理前などに便秘になると、お腹が張って症状が出やすくなることがあります。便秘やお腹の張りを感じるときに胸やけやみぞおちの痛みがあるときは、胃酸の逆流が起きている可能性が高いと言えます。ご自身の症状がどんなタイミングで現れるか、日頃からチェックしておくと良いでしょう。
【医療機関編】専門医が行う逆流性食道炎の本格的な治療法

「セルフケアを頑張っているけれど良くならない」「薬をやめるとすぐに症状がぶり返す」
そのような方は、一度専門医による診断と治療を受けることをおすすめします。消化器内科では、詳細な問診に加え、必要に応じて専門的な検査や市販薬とは異なるアプローチでの薬物療法を行います。
確実な診断には「胃内視鏡検査(胃カメラ)」が必要な理由
逆流性食道炎の診断は、症状の問診だけで行われることもありますが、確定診断のためには胃内視鏡検査(胃カメラ)が必要になるケースがほとんどです。
なぜなら、胸やけや痛みの原因が実は逆流性食道炎ではなく、食道がんや胃がんなどの病気である可能性もゼロではないからです。内視鏡検査を行えば、食道の粘膜を直接カメラで確認できるため、炎症の程度やがんのリスクとなるバレット食道の有無を、詳しく判定できます。鎮静剤を使用するなど、苦痛の少ない検査を実施している病院も最近は多いです。
薬で治す:PPI・P-CABなど薬物療法の効果と種類
医師が逆流性食道炎の治療が必要だと判断した場合、医療機関では患者の症状や重症度に合わせて、効果が高く持続性のある薬を処方します。主に以下の薬が中心的に用いられます。
PPI(プロトンポンプ阻害薬):
胃酸の分泌を強力に抑える薬です。逆流性食道炎治療の第一選択薬として世界中で使われており、多くの患者さんがこの薬で症状の改善を実感します。
P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー):
PPIよりもさらに即効性があり、酸を抑える効果が安定している新しいタイプの薬です。従来の薬で効果が不十分だった方や、夜間の症状がつらい方にも高い効果が期待されています。
消化管運動機能改善薬:
胃の動きを良くして、食べ物をスムーズに十二指腸へ送り出すことで、物理的に逆流を防ぐ薬です。
薬を飲めば症状はだいぶスッキリすると思いますが、緩んでしまった筋肉(下部食道括約筋)を元に戻すわけではありません。薬で炎症を抑えながら、並行して生活習慣を見直すことが、再発を防ぐための本当の治療です。
薬で改善しない場合の外科的治療(噴門形成術など)
薬物療法や生活習慣の改善を続けても効果が不十分な場合は、外科的治療が検討されることもあります。代表的な手術に、緩んでしまった胃の入り口(噴門)を胃の上部で包んで縫い縮め、逆流を防ぐ形を作る噴門形成術があります。症状が改善しない場合には、必ず専門機関で受診するようにしましょう。
症状が続く場合は消化器内科へ受診を考えるべきサイン
逆流性食道炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返しやすい病気ですが、中には危険な病気が隠れているケースもあります。以下のサインが見られる場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
市販薬を2週間ほど服用しても症状が改善しない:
薬が合っていないか、別の病気が原因である可能性があります。
食べ物が喉につかえる感じがする:
食道が狭くなっていたり、炎症が悪化している可能性があります。
黒い便が出た:
胃や食道から出血しているサインです。海苔の佃煮のような真っ黒な便が出た場合は、至急受診が必要です。
急に体重が減った:
食事量が減っているだけでなく、悪性の病気が隠れているリスクも考慮すべき状態です。
50歳以上で、これまで一度も胃カメラを受けたことがない:
症状の有無にかかわらず、一度粘膜の状態を確認しておくことを強くおすすめします。
また、胃酸の逆流は放っておくと虫歯や口臭など、口の中の環境まで悪くするリスクがあります。たかが胸やけと思わず、体のSOSを見逃さないようにしましょう。
まとめ
逆流性食道炎は、決して治らない病気ではありません。記事で紹介した通り、食事の内容や睡眠時の姿勢といった日々の生活習慣を根本から見直すことが、再発を防ぐ何よりの近道です。もしセルフケアだけで改善が見られない場合も、消化器内科での専門的な検査と治療によって、症状をコントロールすることも可能になるでしょう。
「たかが胸やけ」と我慢して将来の食道がんや虫歯・口臭リスクを高めてしまう前に、ぜひ早めの対処を心がけてください。不快な症状から解放され、心から美味しく食事ができる、健やかな毎日を取り戻しましょう。
この記事を監修した人

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師
医学博士/日本内科学会 総合内科専門医
専門分野:消化器内科・内科
日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、健診ドック専門医、日本医師会認定産業医。 2003年東京女子医科大学卒業。東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。
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