PMSの吐き気が起こる原因と、症状を和らげるためにできること

月経前になると「吐き気がひどい」「胸がムカムカする」と、気持ちの悪さに悩まされる方もいらっしゃるかもしれません。こうした不調が毎月みられる場合はPMSが疑われますが、その原因はどこにあるのでしょうか。 本記事では、PMSの吐き気が起こるメカニズムを、不快感を緩和させる方法とともにお伝えします。365日、心も身体も元気でいるために、ぜひご覧ください。 PMS(月経前症候群)とは? 本題に入る前に、PMSがどのようなものなのかをおさらいしていきます。月経前症候群ともいわれるPMSは、月経前にみられる身体的、あるいは精神的な不調を指します。排卵後から月経がくるまでの時期に、胸の張りを感じたり気分が沈んだりする場合は、PMSかもしれません。こうした不調は女性が抱える悩みとなりますが、通常、月経が始まると症状は自然と落ち着きます。 また、月経前にPMSによる影響を受ける女性は多いものの、その不調の度合いはさまざまです。「なんだかいつもと違うな」と違和感を覚える程度の方もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらい症状が表れる方もいます。特にメンタル面でのゆらぎが顕著にみられ、症状が重い場合は、"PMDD(月経前不快気分障害)"に該当するおそれがあります。 ホルモンバランスが乱れやすい思春期や更年期の女性は症状が重くなりがちですから、月経前も心地のよい日々を過ごせるよう、ご自身に合う対処法を見つけておくのが望ましいです。 PMSの症状 多くの女性を悩ませるPMSには、200を超える症状があるといわれています。具体的には、どのような不調が表れるのでしょうか。 身体的な症状 精神的な症状 動悸吐き気乳房や腹部の張り頭痛腹痛便秘めまい倦怠感むくみのぼせ手足のしびれ過食 不安抑うつ混乱集中力の低下怒り興奮情緒不安定不眠もの忘れ 上記の表からも、PMSにはさまざまな症状があるとうかがえます。 月経が始まると症状が落ち着くため、こうした心身の不調が起きていても我慢してしまうかもしれません。ただし、「PMSだと思っていたけれど、別の病気による症状だった」という可能性もありますから、不調が続くときは婦人科を受診することをおすすめします。 PMSの吐き気が起きる原因 数あるPMSの症状のなかでも、吐き気は何が原因で起こるのでしょうか。 実は、PMSが起こるメカニズムは医学的に解明されていません。諸説ありますが、ホルモンバランスの変化が関係していると考えられており、月経前に吐き気がひどくなるのもこれによると考えられます。女性の身体でこうした変化が起きている時期とPMSの期間が重なることから、PMSの吐き気にはホルモンバランスの変化が関係していると考えられます。PMSがみられるのは、"黄体期"とよばれる、排卵後から次の月経を迎えるまでの時期です。この時期は、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンが盛んに分泌されています。プロゲステロンは妊娠しやすい身体をつくるうえで不可欠なホルモンで、黄体期が終わりに近づくにつれて分泌量が急激に低下します。女性の身体の中でこうした変化が起きている時期と、PMSの期間が重なることから、PMSの吐き気にはホルモンバランスの変化が関係していると推測されるわけです。 ほかにも、マグネシウムやカルシウムの不足、遺伝的要因、食生活の乱れ、ストレスなどがトリガーとなって、月経前に吐き気が生じる可能性もあります。PMSの吐き気はホルモンバランスの変化だけではなく、あらゆる要素が絡み合って起こる可能性があると覚えておきたいところです。 月経前の吐き気を緩和させるためにできること PMSの吐き気は月経が始まれば落ち着くとはいえ、つらい思いはしたくないものです。月経前に感じる気持ちの悪さを緩和させるために、ご自身でも取り組めることはあるのでしょうか。 ここからは、PMSの吐き気を和らげるための方法をお伝えします。月経前でも元気に過ごすためのヒントとなれば幸いです。 胃腸にやさしい食事をとる PMSの吐き気がみられるときには、温かく消化に良い食事をとるのがおすすめです。 月経前になると、おなかが張ったり便秘になったりする女性もいらっしゃるかもしれません。これは、PMSの引き金とされているプロゲステロンに、胃腸の動きを鈍らせる作用があるためです。胃腸がうまくはたらいていないときこそ、身体にやさしい食事をとるといいでしょう。 食物繊維の多い食材や油っこいものは避け、胃の負担になりにくい食べ物やホルモンバランスを整える効果のある食品を積極的に摂取してみてはいかがでしょうか。たとえば、おかゆや納豆、豆腐、ヨーグルトなどが挙げられます。 以下の記事では、月経前にみられるPMSの緩和にも役立つイソフラボンの効果について解説しています。 適度に運動する PMSの吐き気と上手に付き合うためには、適度な運動も不可欠です。 月経前に心身の不調を感じているときには「何もしたくない」と、身体を動かすことに抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。もちろん無理をしてまで取り組む必要はありませんが、適度な運動がストレス解消や気分転換になり、軽い有酸素運動がPMSの緩和につながるともいわれています。 身体を動かす際は、スポーツジムで実施するような本格的な運動ではなく、ウォーキングやヨガ、腰回しといった簡単なものでも構いません。そのほか座ったままでもできるストレッチや、寝ながらできる運動もPMSの吐き気を緩和させる良い方法といえます。より手軽に取り組める"ながら運動"については、以下の記事もご覧ください。 市販薬を服用する 「少しすれば気持ちの悪さは落ち着くから......」と我慢せず、ドラッグストアで手に入る吐き気止めや漢方薬、サプリメントなどに頼るのも一つの手です。 たとえば漢方薬なら、吐き気をはじめとするPMSの症状に効果的な、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や五苓散(ごれいさん)を服用するとよいかもしれません。サプリメントであれば、エクオールやマカが含まれたものを選んでみてはいかがでしょうか。 もしも服用すべき薬がわからない場合は、薬剤師にご自身の症状を相談したうえで購入するのが望ましいです。 女性の健康に役立つエクオールについて知りたい方には、以下の記事もおすすめです。 婦人科で相談する ピルをはじめとする適切な薬剤を医師と相談して選ぶのもよいかもしれません。女性ホルモンの過剰な分泌を抑えて、バランスを整える治療薬がピルです。ピルは"医療用医薬品"に該当するため、ドラッグストアでは購入できません。服用を考えている場合は、クリニックを受診する、あるいはオンラインで医師の診察を受けて処方してもらうことが必要です。 ご自身に合う薬を見つけるためにも、PMSの悩みをきちんと医師に相談することも不可欠です。 PMSの吐き気はホルモンバランスの変化が原因。日々の過ごし方を見直して症状を緩和させよう 今回は、PMSの吐き気が起こるメカニズムを、症状を緩和させる方法とともにお伝えしました。...

月経前になると「吐き気がひどい」「胸がムカムカする」と、気持ちの悪さに悩まされる方もいらっしゃるかもしれません。こうした不調が毎月みられる場合はPMSが疑われますが、その原因はどこにあるのでしょうか。

本記事では、PMSの吐き気が起こるメカニズムを、不快感を緩和させる方法とともにお伝えします。365日、心も身体も元気でいるために、ぜひご覧ください。

PMS(月経前症候群)とは?

本題に入る前に、PMSがどのようなものなのかをおさらいしていきます。

月経前症候群ともいわれるPMSは、月経前にみられる身体的、あるいは精神的な不調を指します。排卵後から月経がくるまでの時期に、胸の張りを感じたり気分が沈んだりする場合は、PMSかもしれません。こうした不調は女性が抱える悩みとなりますが、通常、月経が始まると症状は自然と落ち着きます。

また、月経前にPMSによる影響を受ける女性は多いものの、その不調の度合いはさまざまです。「なんだかいつもと違うな」と違和感を覚える程度の方もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらい症状が表れる方もいます。特にメンタル面でのゆらぎが顕著にみられ、症状が重い場合は、"PMDD(月経前不快気分障害)"に該当するおそれがあります。

ホルモンバランスが乱れやすい思春期や更年期の女性は症状が重くなりがちですから、月経前も心地のよい日々を過ごせるよう、ご自身に合う対処法を見つけておくのが望ましいです。

PMSの症状

多くの女性を悩ませるPMSには、200を超える症状があるといわれています。具体的には、どのような不調が表れるのでしょうか。

身体的な症状 精神的な症状
  • 動悸
  • 吐き気
  • 乳房や腹部の張り
  • 頭痛
  • 腹痛
  • 便秘
  • めまい
  • 倦怠感
  • むくみ
  • のぼせ
  • 手足のしびれ
  • 過食
  • 不安
  • 抑うつ
  • 混乱
  • 集中力の低下
  • 怒り
  • 興奮
  • 情緒不安定
  • 不眠
  • もの忘れ

上記の表からも、PMSにはさまざまな症状があるとうかがえます。

月経が始まると症状が落ち着くため、こうした心身の不調が起きていても我慢してしまうかもしれません。ただし、「PMSだと思っていたけれど、別の病気による症状だった」という可能性もありますから、不調が続くときは婦人科を受診することをおすすめします。

PMSの吐き気が起きる原因

数あるPMSの症状のなかでも、吐き気は何が原因で起こるのでしょうか。

実は、PMSが起こるメカニズムは医学的に解明されていません。諸説ありますが、ホルモンバランスの変化が関係していると考えられており、月経前に吐き気がひどくなるのもこれによると考えられます。女性の身体でこうした変化が起きている時期とPMSの期間が重なることから、PMSの吐き気にはホルモンバランスの変化が関係していると考えられます。

PMSがみられるのは、"黄体期"とよばれる、排卵後から次の月経を迎えるまでの時期です。この時期は、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンが盛んに分泌されています。プロゲステロンは妊娠しやすい身体をつくるうえで不可欠なホルモンで、黄体期が終わりに近づくにつれて分泌量が急激に低下します。女性の身体の中でこうした変化が起きている時期と、PMSの期間が重なることから、PMSの吐き気にはホルモンバランスの変化が関係していると推測されるわけです。

ほかにも、マグネシウムやカルシウムの不足、遺伝的要因、食生活の乱れ、ストレスなどがトリガーとなって、月経前に吐き気が生じる可能性もあります。PMSの吐き気はホルモンバランスの変化だけではなく、あらゆる要素が絡み合って起こる可能性があると覚えておきたいところです。

月経前の吐き気を緩和させるためにできること

PMSの吐き気は月経が始まれば落ち着くとはいえ、つらい思いはしたくないものです。月経前に感じる気持ちの悪さを緩和させるために、ご自身でも取り組めることはあるのでしょうか。

ここからは、PMSの吐き気を和らげるための方法をお伝えします。月経前でも元気に過ごすためのヒントとなれば幸いです。


胃腸にやさしい食事をとる

PMSの吐き気がみられるときには、温かく消化に良い食事をとるのがおすすめです。

月経前になると、おなかが張ったり便秘になったりする女性もいらっしゃるかもしれません。これは、PMSの引き金とされているプロゲステロンに、胃腸の動きを鈍らせる作用があるためです。胃腸がうまくはたらいていないときこそ、身体にやさしい食事をとるといいでしょう。

食物繊維の多い食材や油っこいものは避け、胃の負担になりにくい食べ物やホルモンバランスを整える効果のある食品を積極的に摂取してみてはいかがでしょうか。たとえば、おかゆや納豆、豆腐、ヨーグルトなどが挙げられます。

以下の記事では、月経前にみられるPMSの緩和にも役立つイソフラボンの効果について解説しています。



適度に運動する

PMSの吐き気と上手に付き合うためには、適度な運動も不可欠です。

月経前に心身の不調を感じているときには「何もしたくない」と、身体を動かすことに抵抗のある方もいらっしゃるかもしれません。もちろん無理をしてまで取り組む必要はありませんが、適度な運動がストレス解消や気分転換になり、軽い有酸素運動がPMSの緩和につながるともいわれています。

身体を動かす際は、スポーツジムで実施するような本格的な運動ではなく、ウォーキングやヨガ、腰回しといった簡単なものでも構いません。そのほか座ったままでもできるストレッチや、寝ながらできる運動もPMSの吐き気を緩和させる良い方法といえます。

より手軽に取り組める"ながら運動"については、以下の記事もご覧ください。



市販薬を服用する

「少しすれば気持ちの悪さは落ち着くから......」と我慢せず、ドラッグストアで手に入る吐き気止めや漢方薬、サプリメントなどに頼るのも一つの手です。

たとえば漢方薬なら、吐き気をはじめとするPMSの症状に効果的な、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や五苓散(ごれいさん)を服用するとよいかもしれません。サプリメントであれば、エクオールやマカが含まれたものを選んでみてはいかがでしょうか。
もしも服用すべき薬がわからない場合は、薬剤師にご自身の症状を相談したうえで購入するのが望ましいです。

女性の健康に役立つエクオールについて知りたい方には、以下の記事もおすすめです。



婦人科で相談する

ピルをはじめとする適切な薬剤を医師と相談して選ぶのもよいかもしれません。

女性ホルモンの過剰な分泌を抑えて、バランスを整える治療薬がピルです。ピルは"医療用医薬品"に該当するため、ドラッグストアでは購入できません。服用を考えている場合は、クリニックを受診する、あるいはオンラインで医師の診察を受けて処方してもらうことが必要です。

ご自身に合う薬を見つけるためにも、PMSの悩みをきちんと医師に相談することも不可欠です。

PMSの吐き気はホルモンバランスの変化が原因。日々の過ごし方を見直して症状を緩和させよう

今回は、PMSの吐き気が起こるメカニズムを、症状を緩和させる方法とともにお伝えしました。

PMSとは月経前にみられる心身の不調のことで、吐き気やおなかの張り、情緒不安定などの症状が表れます。ホルモンバランスの変化が原因と考えられていますが、ほかにも遺伝的要因やストレスといった要素が絡んでいる可能性もあります。

月経前に気分が優れないときには、食事を見直したり運動に取り組んだりと、日々の過ごし方を見直すのがポイントです。決して無理はせず、つらい症状に悩むときは薬の服用も視野に入れてPMSと上手に付き合っていきましょう。



SUPERVISERこの記事を監修した人

profile
間瀬 有里(ませ ゆり)医師

間瀬 有里(ませ ゆり)医師

医学博士
専門分野:婦人科

東京ミッドタウンクリニック、浜松町ハマサイトクリニックに勤務。日本医科大学医学部医学科卒業。日本産科婦人科学会専門医。日本産科婦人科学会指導医。日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。東京ミッドタウンクリニックと同フロアでは、管理栄養士が常駐し、より健康でより美しい生活をサポートするためのヘルスケアショップ TMMC Plus(ティーエムエムシープラス)が展開。

東京ミッドタウンクリニック:https://www.tokyomidtown-mc.jp/
浜松町ハマサイトクリニック:https://www.hamasite-clinic.jp/
TMMC Plus(ティーエムエムシープラス):http://www.tmmcplus.com/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
ドクターズコラム
この記事をシェアする

この記事は、働く女性の医療メディア
ILACY(アイラシイ)の提供です。

“おすすめ記事recommended

CATEGORYカテゴリー