更年期に多い過多月経・過長月経とは?女性ホルモンが引き起こす変化(2025年更新版)

更年期になると、月経の周期や量に変化が現れます。例えば、月経の間隔が短くなったり延びたり、量が減ったり増えたり、すぐ終わったり長引いたりすることがあります。これらの変化は、主に女性ホルモンのバランスが崩れることによって起こります。
今回は、「以前より出血量が増えている...」といった過多月経や、「ダラダラとした出血が続いている...」といった過長月経にフォーカスをあて、その陰に潜んでいるかもしれない病気のほか、婦人科を受診するタイミングなどについてご紹介します。
女性ホルモンの減少によって月経の周期や出血量が変化する
閉経の年齢は個人差が大きく、早い人で40代前半、遅い人だと50代後半ですが、日本人女性が閉経する平均年齢は、50歳前後といわれています。一般的に、閉経の前後5年の約10年間が更年期といわれ、そこにあたる40代半ばから50代半ばまでの時期は、体にさまざまな不調が現れます。
更年期では、女性ホルモンが大きくゆらぎながら減少していくため、月経の周期や出血量などに変化が見られるようになります。
更年期に起こりやすい月経の変化として、周期が短くなったり、反対に月経がない月が続いたり、月経が来ても出血量が少なくすぐに終わるといったことが挙げられます。また、出血量の多い過多月経や月経がダラダラ続く過長月経も、しばしば認められます。
更年期になると、卵巣機能の衰えからホルモン分泌が不安定になり、うまく周期的に子宮内膜が剥がれないことがあります。その結果、子宮内膜が増殖し、それが一気に剥がれて過多月経が起こったり、少しずつダラダラと剥がれて過長月経が起こったりすると考えられています。
もしかして過多月経かも!?
過多月経とは、1回の月経における経血量が140ml以上の場合を指します。しかし、実際の経血量は、なかなか把握しにくいものです。
そこで、過多月経の目安となるチェックポイントをご紹介します。
・ナプキンやタンポンを1~2時間で交換しないと漏れてしまう
・昼間でも夜用のナプキンをしないと漏れてしまう
・500円玉以上のサイズのレバー状の塊が出る
・日常的に立ち眩みやめまい、動悸、息切れがある
これらに一つでも当てはまる場合、過多月経の可能性が高いです。
なお、出血日数が8日間以上続く場合を過長月経といいます。
<こちらもCHECK>
見逃さないで!過多月経や過長月経の陰に病気が潜んでいる場合も...
更年期の月経の変化には、個人差があります。「これくらいなら大丈夫」と自己判断をしてしまうと、病気を見逃してしまう可能性もあります。
過多月経や過長月経の陰に潜んでいる可能性のある主な病気として、次のような
1.器質性疾患 2.機能性疾患 3.内科的疾患 が考えられます。1.器質性疾患
子宮内膜ポリープ
子宮内膜ポリープは、子宮内膜の一部が過剰に増殖して、子宮内に突出した病変です。大きさによっては過多月経の原因となります。ポリープ自体は良性ですが、子宮体癌やその前がん病変が見つかることもあるため、婦人科での精査をお勧めします。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性腫瘍です。大きさや、数、できる場所によって、子宮内膜の面積を拡大させたり、異常な子宮収縮を起こさせたり、血管を増生させるために過多月経の原因となります。治療の必要性について婦人科で相談することをお勧めします。
<こちらもCHECK>
子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)
子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮の筋層に入り込んで発生し、子宮筋層が厚くなった疾患です。子宮内膜の変形や拡張、異常な子宮収縮を引き起こし、過多月経の原因となります。月経困難症の原因ともなり、治療の必要性について婦人科で相談することをお勧めします。
<こちらもCHECK>
2.機能性疾患
黄体機能不全
黄体機能不全とは、排卵後にできる黄体からのホルモン分泌が不十分な状態をいいます。子宮内膜が十分に成熟できず、はがれ落ちやすくなります。主に過少月経や不正出血の原因となりますが、過多月経を起こすこともあります。
無排卵性周期症
無排卵周期症とは、月経のような出血があるにもかかわらず、排卵を伴わない病態です。黄体ホルモンが分泌されないため通常の周期的な月経が起こらず、子宮内膜が過剰に増殖した後に破綻して出血するため、多い出血を認めます。
ホルモン分泌が不安定な初経から1~2年の思春期や閉経前によくみられます。また強いストレスや過度のスポーツ・ダイエット、多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺疾患、高プロラクチン血症などの病気でも認めます。
3.内科的疾患
血液凝固異常
フォン・ヴィレブランド病や血小板機能異常症、血友病など、止血機能が異常の病気であることもあります。
普段から出血しやすい、出血が止まりにくい、あざができやすいなどの自覚症状がある場合はこれらの病気の可能性があります。
4.その他
過多月経や過長月経だと思っていたものの、実は不正出血であるの可能性もあります。その場合、子宮体がんや子宮頸がんなどの悪性疾患が潜んでいる可能性があります。自己判断せずに婦人科を受診しましょう。
「月経量が多いかも?」「なかなか出血が止まらない!」...迷ったら躊躇わずに婦人科へ
月経がおかしいかもと思っても、他人と比べようがないし、ただの加齢と言われたら恥ずかしいし...と、なかなか婦人科を受診するのが躊躇われる方が多いかと思います。
でも迷った時こそ、躊躇わずに婦人科を受診してください。問題ない出血かどうかなんて、婦人科医も診察しないとわかりません。
先ほど述べたような過多月経を疑う症状、8日以上の出血、月経時以外の出血を認めるようなときは、一度婦人科を受診してください。
診察の際は、月経の周期、出血の時期や量、婦人科疾患の既往をお伝えいただくと参考になりますので、日頃から記録していただくとよいでしょう。
過多月経・過長月経以外にも気をつけたいサイン
ここまで、過多月経・過長月経に関する情報を解説いたしました。月経に関する心配事は他にも多々あると思います。
そこで、今回は月経のうち出血に関する症状について2つご紹介します。
貧血症状
過多月経の目安となるチェックポイントの4つ目でご案内した「日常的に立ち眩みやめまい、動悸、息切れがある」は貧血症状です。実は月経量が多かったり月経が頻回な可能性があります。偏食や何らかの疾患が原因となっていることもあります。このような症状がある場合は、医療機関での精査をお勧めします。
中には、慢性的に貧血のため、体が貧血状態に慣れてしまい、症状に気づきにくい方もいらっしゃいます。「やたらと氷を食べてしまう」「階段を上ると息が上がる」「顔が青白い」「下瞼の裏が白い」などの症状がないかを注意してみてください。
不正出血
月経以外の期間に性器出血がみられることを不正出血といいます。
見逃さないで!過多月経や過長月経の陰に病気が潜んでいる場合も...のその他でも触れましたが、いつもと違う月経の場合、不正出血の可能性があります。ホルモンバランスの乱れが原因で不正出血を起こすこともありますが、何らかの病気が隠れていることもありますので、婦人科で精査することをお勧めします。
具体的な症状がなくても定期的な検査を心掛けて
過多月経、過長月経の症状は、月経時に不快な思いをするだけでなく、貧血を併発するなど日常生活に悪影響を及ぼす可能性があります。先ほども言及しましたように、中には常に貧血状態で体が慣れてしまい、体調の変化に気付かないことも...。
出血量に変化が見られるときはもちろん、「疲れやすい」「めまいがする」「息切れがする」など、気になる症状が現れたときは、すみやかに医師に相談するようにしましょう。
この記事を監修した人

針金 永佳 (はりがね えいか) 医師
医学博士
専門分野:婦人科
東京ミッドタウンクリニックに勤務。日本医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会専門医。周産期新生児医学会周産期専門医。女性医学学会女性ヘルスケア専門医。新生児蘇生法「専門」コース修了。由利組合総合病院産婦人科、日本医科大学武蔵小杉病院 女性診療科・産科を経て現在に至る。
東京ミッドタウンクリニック:https://www.tokyomidtown-mc.jp/
recommended
カテゴリー