テストステロンが、閉経した女性の気力・認知力を高める?
男性ホルモンの「テストステロン」は、女性の体内でも分泌されているもの。その量は、男性に比べると少ないものの、女性ホルモン(エストロゲン)が激減する時期も、テストステロンのほうは緩やかに減少していくため、更年期以降の女性はそちらの影響を受けやすくなります。
今回は、閉経後の気力や運動機能、認知力を支えるともいわれるテストステロンについて、その働きや女性の体に与えるメリットをご紹介しましょう。
テストステロンはどんな働きをする?
テストステロンとは、デヒドロエピアンドロステロ(DHEA)、ジヒドロテストステロン(DHT)などと並ぶ、男性ホルモンのひとつ。その名称から、「男性だけが持っている」「男性だけに影響する」と思われがちですが、男性は睾丸(精巣)や副腎で、女性は卵巣や副腎でテストステロンを作っており、男女ともに男性ホルモンの影響と恩恵を受けています。
男性ホルモンと聞くと、筋骨隆々の体形の元になるホルモンというイメージが強いでしょう。確かに、テストステロンは筋肉や骨を作り上げ、その強さを保っていますが、心の在り方にも影響していることはあまり知られていません。
男性の5~10%程度ではあるものの、女性の体内に存在するテストステロンも、体の強さと心の健康維持に欠かせない働きをしています。テストステロンの具体的な働きには、下記のようなものがあります。
筋肉や骨の量、強度を保つ
男女問わず、筋肉量と骨の量、その強さを保つのに欠かせないのがテストステロン。男性が女性よりたくましいのは、テストステロンの分泌量が女性より多いからです。
冒険心やバイタリティの源
テストステロンは、人の思考や社会性に大きく関わり、冒険心やバイタリティの源になっています。テストステロンが多い人は、リーダーシップ、リスクをとる決断力、チャレンジ精神が旺盛なのはそのため。
集団の中で自分の意見を主張するのが得意だったり、ボランティアなど社会貢献への思いが強かったりするのも、テストステロンの働きによるものと考えられます。
内臓脂肪の増加を防ぎ、生活習慣病を予防
テストステロンは、内臓脂肪の増加を防ぐ働きもしています。
基礎代謝の維持にも関わっており、肥満や糖尿病、循環器疾患、動脈硬化といった疾患のリスク抑制に不可欠なホルモンだといわれています。
閉経後の女性を支えるテストステロン
更年期に入り、閉経に近付くにつれて女性ホルモン(エストロゲン)が減少していくように、テストステロンも年齢とともに減少します。
しかし、その減少速度は、加速度的に減少するエストロゲンに比べると緩やか。そのため、閉経後の女性の体内では、男女差がなくなるほどテストステロンが優位になり、心と体の健康を支えています。
■テストステロンとエストロゲンの分泌量の変化
テストステロンが優位になることで期待できる働きは、次のようなものです。
筋肉や骨を強くし、質を保つ
エストロゲンが減少すると骨密度が低下し、骨粗しょう症を起こすリスクが高まります。しかし、テストステロンが優位になることで、筋肉や骨の生成を助ける作用があります。
認知力アップ
テストステロンは物事を理解し、判断する認知機能も司っています。テストステロンの濃度が低いほど認知機能も低く、認知症の発症・進行が早いといわれています。加齢とともに衰えていく認知力を維持・向上させるには、テストステロンの濃さが重要です。
行動力、気力の維持
年齢を重ねても継続的に運動している女性を見て、「元気だな」「若々しいな」と感じたことがある人は多いでしょう。
テストステロンが優位になって判断力や決断力が冴えてくるのに伴って、よりパワフルに、行動的になる人は少なくありません。長く人生を楽しむ活力を与えてくれるホルモンだといえます。
血管をしなやかに保つ
エストロゲンが減少すると、血管のしなやかさが失われやすくなるもの。テストステロンはこうした働きを代替し、動脈硬化などのリスクを低減します。
緩やかに減少するテストステロンを維持するには?
テストステロンも年齢とともに減少します。日常生活のちょっとした工夫で、テストステロンを維持・増加させましょう。
筋トレなどの運動を習慣化する
筋トレなどの運動は、テストステロンの分泌を促します。無理のない範囲で、毎日の習慣に運動を取り入れましょう。
社会との接点を持ち続ける
年齢を重ねても社会との接点を持ち続け、自信を持って仕事をしている人はテストステロンが減りにくいといわれています。活躍できる場所を見つけて、自分を高め続ける意欲を持ちましょう。
テストステロンは、閉経後の女性のすこやかな生活に欠かせないホルモン
女性ホルモン(エストロゲン)は、言うまでもなく女性の心身の健康にさまざまな影響を与える大切なものですが、一方で男性ホルモンのテストステロンも、女性がいつまでも若々しく、バイタリティを持って行動するために欠かせないホルモンです。
特に閉経後は、欠乏状態になるエストロゲンの働きを代替してくれる頼もしい存在なので、意識的にテストステロンの維持に努めましょう。
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永田京子(ながた・きょうこ)さん
兵庫県出身、愛知県小牧市在住。2児の母。東映アカデミーに所属し、役者として舞台やドラマなどで活躍した後、ピラティスや整体、経絡、アロマ、リフレクソロジーなどを学び、ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとしての活動を開始。受講者の声と、更年期障害が悪化して苦しむ母を見ていた経験から、女性ホルモン・更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」を創設した。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう「the change of life」の意。著書に「女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操」(三笠書房)があるほか、先日「はじめまして更年期」(青春出版社)が発売したばかり。
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