更年期もぐっすり眠るために。質のいい睡眠をとるための環境づくり
女性ホルモンが減少する更年期は、心身にさまざまな変化が現れます。この時期は「ゆらぎ期」とも呼ばれ、これまで問題なかったことが、急に不安定になる場合も。中でも睡眠トラブルは、多くの更年期の女性を悩ます症状のひとつです。
「心身の変化が激しい時期だからこそ、睡眠時の環境づくりが大切」と話すのは、睡眠コンサルタントの友野なおさん。そこで今回は、更年期に質のいい睡眠をとるための理想の環境や、どうしても眠れないときの対処法について教えていただきました。
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睡眠の質を高める理想の環境とは?
友野さんによると、質のいい睡眠をとるためには、「寝室」「寝具」「着衣」の3つを整えておくことが大切だそうです。それぞれについて、詳しくお聞きしました。
「自然に眠れて自然に起きられる」寝室づくり
人工的な光は、睡眠を妨げてしまいます。
「寝室には、テレビやパソコンなどを置かないようにしましょう。スマートフォンを目覚まし時計の代わりに使っている人も多いと思いますが、できるだけ枕元から離れた場所に置いておくことをおすすめします」
意外と間違えがちなのが、寝室を真っ暗にするために遮光カーテンを使うこと。これでは、朝日がさえぎられてしまい、目覚めにくくなってしまいます。また、室温も眠りの質に影響するため、夏の暑さや冬の寒さに対応できるように、冷暖房の設備があるといいそうです。
寝具は季節に応じて衣替えを
寝具は、季節によって衣替えするのがマスト。
「冬は羽毛布団、夏は肌掛け布団を使って温度調節をしてください。春と秋は比較的眠りやすい季節ですが、急に肌寒くなる夜もあるので、薄手の羽毛布団を足元に置いておくといいと思います」
シーツも同じく、夏の暑い時期は通気性のいい素材や、接触冷感タイプの物に衣替えするのが◎。冬は毛足の長い物や電気毛布などを活用して、背中側も快適に過ごせるように工夫しましょう。
寝るときは肌触りの良いパジャマを着る
寝るときはパジャマを着るようにします。シルクやコットンなど、天然素材で吸水性が良く、肌触りの良い物を選ぶと、寝ているあいだの快適さがアップしますよ。
「ジャージやルームウェアのまま寝たり、モコモコした素材やワンピースタイプのパジャマで寝たりするのは、寝返りを妨げてしまうためNG。同じ理由から、冬場に寒いからといって、パジャマの上に何かを羽織って寝るのも避けたほうがいいですね」
寝つけない、体のほてりで起きてしまう...更年期によくある睡眠トラブルの対処法
睡眠トラブルは更年期に多い症状のひとつですが、悩みの原因は人によって異なります。ここでは、特に悩んでいる人が多い「ベッドに入ってもなかなか寝付けない」「夜中にホットフラッシュで目が覚めてしまう」といった2つの症状について、対処法を教えていただきました。
ベッドに入ってもなかなか寝付けないときの対処法
寝付けない状態が30分以上続くと、さまざまな思考の渦に飲み込まれそうになったり、心配事や不安事で頭がいっぱいになったりして、ますます眠れなくなることがありますよね。
「そういうときは、無理に寝ようとせず、一度ベッドから出てリビングなど寝室以外の場所に行き、眠くなるまで過ごしましょう。本を読む、洗濯物をたたむなど単調な作業をして、眠くなってきたらベッドに戻るといいですよ。
このときに大切なのが、テレビやスマートフォンなどを使って、光の刺激を受けないようにすること。また、時間の情報が入ると『あと何時間しか寝られない』と焦ってしまうため、時計を見たり、ラジオを聞いたりすることも避けてください」
毎晩のように眠れなくて困っている人に向けて、友野さんが推奨するのが、眠る前に好きなことをする時間を設けること。
「更年期世代の女性は寝るギリギリまで忙しくしていることが多く、ベッドに入ったからといって、すぐに気持ちをオフにすることは難しいと思います。眠れなくて困っている人は、例えば塗り絵や編み物など、自分の好きなことをする時間を数分でもいいので持ちましょう。そのワンクッションを挟むことによって心が穏やかになり、眠りやすい状態が作られます」
夜中にホットフラッシュが起きて目が覚めてしまうときの対処法
更年期は、体のほてりやホットフラッシュが原因で、大量に汗をかいて目覚めてしまうこともありますよね。
「寝室から出なくてもいいように、着替えやペットボトルの水をあらかじめベッドサイドに用意しておきましょう。夜中にシーツを替えるのは面倒なので、シーツの上にバスタオルを敷いておき、汗をかいたらそれを取り替えるようにしてもいいですね」
睡眠アイテムを活用してより深く眠れる環境づくりを
更年期の睡眠トラブルは、年齢的に仕方がないことだからとあきらめがち。しかし、決して改善できないわけではありません。まずは、この記事でご紹介した、睡眠の質を高める環境づくりを実践してみてください。
「更年期の女性は、手足の冷えが睡眠トラブルを引き起こす場合があります。足が冷えるからといって、靴下を履いて寝るのは寝返りを妨げてしまうためNGですが、シルク素材などで編まれた薄手のレッグウォーマーを着用するのはおすすめです。
目元を温めることが、手足を温めることにつながるという研究結果もあります。市販のグッズを使って、寝る前に目元を温めるのもいいですね」
質のいい睡眠をとるためには「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」の状態を作ることが大切。さまざまな睡眠グッズを活用して、快適な睡眠環境づくりをしていきましょう。
お話を伺ったのは...
友野なお(ともの・なお)さん
睡眠コンサルタント。自身が睡眠を改善したことにより、15kgのダイエットと重度のパニック障害の克服、体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会の正会員。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とし、全国での講演活動、企業の商品開発やコンサルテーション、執筆活動などを行う。
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