美容コラムニスト近藤須雅子さんに聞く「美容医療超入門」 【第3回(全4回)】

第1回・2回と、美容医療についての基本的な知識を近藤さんに教えていただきました。
第3回目となる今回、私たちが美容医療にもっている疑問や世間の噂など、近藤さんに聞いてみました。
第3回
もっと知りたい美容医療
美容クリニックにはいつから行けばいい?
よくいただく質問です。
私たちがクリニックに来院するのは、体調がよくないときや病気や怪我の治療のためというのが、ほとんど。ですから、病気でも怪我でもなく美容のために来院するとなると、いつがいいのかタイミングがつかめませんよね。
もちろん、シミや肌荒れなど予防や改善したいテーマがあれば、一般的な疾病と同じように、早ければ早いほどベター。治療もスムーズで効果も高くなります。もし身近に美容クリニックに通院するようになって、すごく素敵になったという友人がいらしたら、その方にアドバイスを求めるのもいいと思います。
美容クリニックに通っている友人がいません。今すぐ解決したい問題があるわけでもないけれど、興味がある......という場合は?
まず見学をかねて来院し、以前、ご紹介したビタミンCなどのイオン導入や美白点滴などを試してみてはいかがでしょう。こうしたメニューなら、リスクも限りなく低く、一般的なフェイスエステほどの費用で、医療機関ならではの施術が受けられます。その結果、「これなら普段のスキンケアで十分」と思ったら、きっぱりやめるもよし。「特別な手応えはないけれど、しばらく継続してみよう」と続けてもよし。「一気に悩みが解消できて感激」ということもあるかもしれません。
無記名の情報が氾濫している今だからこそ、百聞は一見にしかず。過大な期待を抱きながら来院の機会を待っているのなら、まず低リスクケアを試してみて、自分にとって美容医療が必要なのかどうか、ご自身の体験をもとに判断されることをオススメします。
一度、体験すると止まらなくなる?
「一度、体験すると止まらなくなるのでは?」という不安には、2つの意味があると思います。
ひとつめは美への欲求がエスカレートして歯止めがきかなくなるという、一種の都市伝説。10代の頃、「一度、お化粧をすると、どんどん濃くなるよ」なんて言っていた人はいませんか?これと同じ論旨ですよね。実際にメイクが濃くなっていった人もいたけれど、たいていの人は適度なレベルを維持していますし、どんどん薄くなってほとんどノーメイクになった人も。「どんどん濃くなる」というのも、淡いメイクが好みの人の基準かもしれません。しっかりメイクを魅力的だと感じる人もいるように、職種や環境によっても「濃さ」の基準は変わります。
美容医療も、さまざまな施術を受け続ける人もいれば、一度でやめる人も。信頼する医師と相談しながら長く細く続ける人も。私の体験では、「止まらなくなる」と心配するほど慎重な方で、実際に止まらなくなった方には会ったことがありません。
もうひとつの意味は、「施術後も、効果を維持するには定期的なメンテナンスが必要」ということ。これはそのとおりです。
たとえば、ヒアルロン酸注射でほうれい線を浅くした場合、個人差はありますが、一般的に、同じ状態を維持するには数ヶ月から半年後に再注入が必要です。というのも、ヒアルロン酸は少しずつ代謝されて、なくなってしまうため。ボトックスなどによるシワ改善も同様で、数ヶ月から半年適度で薬液の効果は薄れます。イオン導入やピーリング、美容点滴などは、もっと短いスパンで1か月程度。いずれも施術後の状態を維持するには、定期的なメンテナンスが必要です。
これをランニングコストがかかると受け取るか、異物を体内に残すこともなく、自然にもとに戻ることができる──安全性が高くやり直しがきくと受け止めるかは、それぞれの考え方次第です。 2000年頃に巻き起こった「プチ整形」の大きな牽引役となったのも、この「もとに戻る」「やり直しがきく」ということ。それをメリットと考えるか、デメリットと捉えるか......は、お一人おひとりの価値観によって異なります。また、ある時期までは"プチな施術"を継続し、時期を見て外科手術を受けるという判断もあるでしょう。いずれにしても人生の長いスパンの中で、考えることが大切ではないでしょうか。

治療をやめると一気に老ける?
美容クリニックに通っている間は美しくても、やめるとリバウンドで一気に老け込んでしまう.........なんて、まるでホラー。そんな話を聞いたら、誰だって恐ろしくなりますよね。どうやら、美容医療が身近でなくて期待や不安が過大に膨らみ、魔法のようなイメージになっているからのよう。魔法が解けたら元どおり、バチがあたってひどい目に遭うことさえある、というわけですね。もちろん、美容医療は魔法ではないし、医師は魔法使いではないのだから、そんなことはありません。
たとえば、60歳の方が美容医療を受けて、55歳の頃の容姿になったとしましょう。そこで満足して治療をストップしたら、翌月には治療前の60歳に容姿に戻った......などというのは都市伝説。そこから再び肌年齢を重ね、実年齢が61歳のときは56歳、62歳のときは57歳の容姿、というわけです。もちろん、これは極端に要約した例ですが、基本的にはそんなイメージでいいと思います。
ところで、治療をやめたときのホラー譚はよく耳にするのに、長期間、美容医療を継続されている方たちについては、意外なほど話題にならないと思いませんか?
現在の美容医療トレンドが生まれて約25年、当時から続けている方も決して少なくありません。仕事柄、20年以上定期的に施術(基本的に外科手術は受けず、皮膚科や内科領域の治療です)を受けている方々にお目にかかることがありますが、多くの方が20年前とほとんど変わらない容姿。なかには20年前より若々しい印象の方もいらっしゃいます。魔法かと思ってしまうほど。
もちろん、成功例だからこそ、自信を持って取材を受けてくださるわけですし、20数年分の治療総額を考えれば、誰もが可能なわけではありません。さらに、若々しい外見がその方の価値を決めるわけでもありません。それでも日本の医療技術の高さには圧倒されるばかり。上手に取り入れる方法は、長寿人生を楽しむ知恵のひとつではないかと思っています。
シミはレーザーで取っても再発する?
レーザー治療後のシミ再発は、もう少し複雑です。
大きく二つの理由があって、ひとつはレーザー照射自体が、シミ再燃の要因になっている場合。レーザー治療後、かえってシミが濃くなったり、いったん改善したと思えたのに、すぐに元どおりシミが現れてしまうのは、こちらのケースだと考えられます。
レーザーによるシミ治療では、レーザーのエネルギーで過剰なメラニンや機能が乱れて過剰にメラニンを作り続けるメラノサイト(色素細胞)を破壊し、排除します。その際、レーザー照射によって肌が炎症を起こし、それがシミにつながることが。また、レーザー照射によって弱った肌が紫外線を浴びると、これもまたシミにつながってしまいます。そのため、レーザー治療後は炎症性のシミを防ぐ塗り薬や紫外線によるダメージを防ぐテープ等のアフターケアを半月程度は励行するのが大原則。これを怠ると、どうしても新たなシミができやすくなってしまいます。
きちんとケアしても肌質によって炎症を起こすことはありますが、その場合は改めて炎症性シミに対して塗り薬などで治療を行います。ここで「治療に失敗した!」と決めつけてクリニックを変える方もいらっしゃいますが、経過を知らないドクターよりも、ここまでの担当医にお任せするのが賢明。そのためにも、不足の事態が起きたとき、安心して相談できる信頼関係を築いておきたいですね。
もうひとつの要因は、シミにつながる癖や習慣が変わっていないこと。こめかみあたりは日差しを浴びやすいのに日焼け止め等のケアが手薄だったり、シミができやすい頬骨の上は手やタオル、洋服などで摩擦刺激を与えがちだったりと、知らず知らずのうちにダメージをため込みがちです。せっかくシミ治療を行っても、こうした無意識の行動がそのままだとまた再発の可能性が。メラニンが過剰に作られるのは、肌をメラニンで守ろうという防御反応です。ダメージを与える回数が増えると、肌は防御反応を高め、結果的にそこだけメラニンが過剰に作られやすくなるので、無意識のシミ習慣がないか、セルフチェックしてみてください。
これまでの「近藤須雅子さんにお聞きする美容医療超入門」はこちらからご覧ください。
美容コラムニスト近藤須雅子さんに聞く「美容医療超入門」【第1回(全4回)】
美容コラムニスト近藤須雅子さんに聞く「美容医療超入門」【第2回(全4回)】
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この記事を書いた人

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近藤 須雅子(こんどう すがこ)
美容コラムニスト
美容エディターとして多数の女性誌、美容雑誌で美容記事を取材・執筆。美容医療に関する深い知識と、大胆な語り口、独自の視点でドクターからの信頼も厚い。著書に『プチ整形の真実』(講談社)、「医師・医療スタッフのための化粧品ハンドブック」(著者
平尾哲二 中外医学社)など寄稿も多数。
Yahoo!ニュースでもエキスパートとして「今どきの美の事情」をテーマに発信中。
https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/kondosugako
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