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「非日常の演出と信頼の積み重ねが、ラグジュアリーをつくりあげる」田中雅之さんに聞く、ブランドの魅力の伝え方【前編(全2回)】

ブランドのPRでは、商品・サービスや、ブランドそのものをより多くの方々に知ってもらうための情報発信を行います。
その目的は、ブランドの魅力を最大限に伝え、施策を通じてブランドのイメージを形成することです。
さらに、企業と顧客がお互いにやり取りする双方向のコミュニケーションによって、長期的な信頼関係を築くことができます。

今回は、ラグジュアリーを主軸に、PR・コンサルティングを行われている田中雅之さんにインタビューいたしました。
ラグジュアリーブランドのPR&アンバサダーを務めた経験を糧に、現在も第一線で活躍されている田中さんに、ラグジュアリーで大切なことを中心にお話しいただいています。

ブランドのPRでは、商品・サービスや、ブランドそのものをより多くの方々に知ってもらうための情報発信を行います。 その目的は、ブランドの魅力を最大限に伝え、施策を通じてブランドのイメージを形成することです。
さらに、企業と顧客がお互いにやり取りする双方向のコミュニケーションによって、長期的な信頼関係を築くことができます。

今回は、ラグジュアリーを主軸に、PR・コンサルティングを行われている田中雅之さんにインタビューいたしました。
ラグジュアリーブランドのPR&コミュニケーションを務めた経験を糧に、現在も第一線で活躍されている田中さんに、ラグジュアリーで大切なことを中心にお話しいただいています。

私の人生に深い関わりがあるのは、フランスへの憧れ

――田中さんは、複数の外資系化粧品ブランドのPR&コミュニケーションを担当後、現在ではミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社の代表取締役として、幅広い業界のPRやコンサルティングを手掛けていらっしゃいますよね。そもそも美容に興味をもたれたきっかけや、独立を決めるまでの経緯を教えてください。

田中さん(以下、田中):美容を好きになったのは、フランスの化粧品ブランドに勤めて、マーケティングやPRで携わり始めたことがきっかけです。

最初に化粧品ブランドに入社した理由は、もともと美容が好きだったからというわけではありません。"フランスへの憧れ"が、その理由です。というのも、私がまだ幼かった頃に、商社に勤務し世界中を飛び回っていた叔父が、木箱にグラデーション順に6本並んだ水色のクレヨンを、フランスのおみやげとして買ってきてくれたことがありました。大好きな6つの水色だけが詰まったクレヨンなんてセンスに溢れていますよね。その美しさにとても感動し、「将来はフランスの企業で働きたい!」という夢を抱くようになりました。

この想いを胸に学生時代を過ごし、卒業後にはフランス発のラグジュアリーブランド『Christian Dior』の日本支店に入社することができました。夢が叶ったあのときの喜びは、今でも忘れられません。入社しアシスタントとして活躍したあと、PRやカスタマー担当として10年間過ごしました。そのあと転職して、美容から離れて別の業界の企業でPR担当を務めたのですが、「やはり、化粧品ブランドに携わりたい」という想いが強く残っていて......。美容業界に戻ることに決め、『Estée Lauder』というアメリカに本拠地を置く化粧品ブランドに2年間ほど在籍しました。その後、フランス発の化粧品ブランド『SISLEY』でコミュニケーション部のマネージャーやブランドアンバサダーとして12年ほど働いていたあるとき、大きな転機が訪れました。

それは、Christian Diorに在籍していたときに私を指導してくれた、スイス人の元上司である社長との再会です。このとき、スイスのブランドの商品を日本に取り入れる仕事をされていた元上司から、「独立して、私の仕事を手伝ってくれないか」とすすめられました。元上司のサポートもあり、2015年の2月にミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社を立ち上げるに至りました。ありがたいことに、2025年の2月には10周年を迎えます。多くの方々に支えられながら、今ではさまざまな業界でPR・コンサルティングを行わせていただいております。

複数の外資系化粧品ブランドに勤めたことで、美容やラグジュアリーブランドの素晴らしさを知ることができたうえ、そのときに出会った方々のおかげで独立にもつながりました。フランスへの憧れから始まり、これまでのすべての経験が今の私を形成していると思っています。

ラグジュアリーを言い換えると、非日常的な経験・空間を体験すること

――ミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社には、どのようなお客様からのご依頼があるのでしょうか?

田中:「ラグジュアリーや、唯一無二のものをテーマにPRしたい」というご要望をもって、依頼いただくお客様が多いですね。

これまで美容業界に長く従事していたので、その経験から美容業界のお客様にご依頼をいただくことももちろんあります。それ以外にも、ファッションやホテル、食品・飲料など、ラグジュアリーをテーマにしたさまざまな業界のお客様からもご依頼いただいています。これまでにPRを手掛けたブランドの商品として挙げられるのは、化粧品や腕時計、珍しいものだとラグジュアリーなビールなどです。幅広い業界・商品に関わりましたが、いずれも共通しているのは"高級品である"ということですね。

特定の業界に偏っていない理由は、私に対して"ジャンルを超えて、ラグジュアリーな世界観を得意としている"というイメージをもっていただけているからではないでしょうか。過去に携わったラグジュアリーブランドでPR&コミュニケーションを担当してきた経験が活きていると実感しています。


――ラグジュアリーな体験をPRのなかで提供するために、どのようなことを意識されていますか?

田中:"非日常を体験してもらうこと"を常に意識しています。日常とかけ離れた空間や体験こそが、ラグジュアリーであると考えるからです。

以前、新しいラグジュアリーホテルの内覧会を手掛けた際に、ホテル内の素敵なバーにメディアの方々を招待して、ホテルの総支配人とお話しできる機会を設けたことがあります。高級感のある空間で、ホテルの代表となる総支配人と交流を深めるという特別な体験によって、メディアへの大々的な掲載につながりました。その結果、より多くの方々の目に触れ、興味をもっていただくきっかけにもなりました。

一般的に、ホテルの内覧会では、ホテル内のご案内とレストランでのお食事やスパでもてなします。そこにバーでの優雅で楽しいひとときを満喫するという非日常的な体験を盛り込んで、特別な時間を過ごしていただいたことによって、PRが成功したのかなと感じています。

ブランドのPRは信頼でつながり、人を喜ばせて、喜びをくれるもの

――ラグジュアリーブランドのPRにおいて、特に重視しているポイントはなんでしょうか?

田中:お取引先様やメディアの方々から信頼を得ることです。

まずは、お取引先であるラグジュアリーブランドの担当者様が、商品・サービスをどのように世の中に認知してもらいたいのかを、会話から読み解くようにしています。同時に、雑誌社やテレビ局などの各種メディアの方々に「ぜひ、自社のメディアで取り上げたい」と感じていただけるような施策を考えます。このとき常に心がけているのは、お取引先様とメディアの方々の双方に喜ばれるPRになっているかということですね。

私はお取引先様の喜んでいる顔を見ることが何よりも嬉しいです。それを叶えられるPRという仕事ももちろん大好きですし、誇りをもっています。この"好き"という気持ちが、お話しを聞く姿勢や提案する施策に表れ、「この人であれば、私が話したいことや伝えたいことをきちんと理解してくれる」という信頼につながっているのかもしれません。

また、ラグジュアリーにおいては品格も大切ですから、ブランドの発表会の際は、必ずフォーマルな服やブランドイメージやブランドのカラーを意識した服を着用します。信頼してもらえるように内面と外見を整え、お取引先様やメディアの方々に満足いただくことを最優先に考えています。

人の手を加えて独自性を出すことが、ラグジュアリーな付加価値を生み出す

――田中さんが「ラグジュアリーだな」と感じる商品・サービスについて教えてください。

田中:ラグジュアリーな商品・サービスに共通するのは、"人の手が加わる工程が必ずある"ということです。その工程があることによって、商品・サービスは唯一無二のものになり、質の高さを感じることができます。

特にサービスに関しては、「決められたマニュアルに加えて、独自のおもてなしをプラスすることで、ラグジュアリーな付加価値がつく」というのが私の考えです。例えば、高級ホテルのスパでは、基本の施術にくわえ、お客様に合わせて一部の施術を変えたり、プラスしたり、タイミングを見計らってお飲み物を提供したりします。

また、施術自体だけではなく、スパやサロン内の空間に準じたサービスを提供できるのかどうかが、ラグジュアリーな付加価値を創出するうえでは大切です。例えば、お手拭きはビニール袋から取り出すタイプのものではなく、心地よい香りのついたおしぼりをトレーにきちんと乗せたり、飲み物は紙コップはもってのほか、高級感のあるグラスやソーサー付のカップに注いだりするなど、細部へのこだわりが格の違いを生み出すのです。

私自身もラグジュアリーブランドに携わる以上、そういったラグジュアリーの基本的な理念は意識しています。マーケティング上のデータだけを見て判断するのではなく、これまでの知識・経験や第六感をもとに自分なりのこだわりをプラスして、PRの品質を高めています。

非日常を味わってもらえる体験の提供こそが、ラグジュアリーブランドのPR

今回は、独立するまでの道のりやPRで重要なポイント、ラグジュアリーな付加価値を生み出すうえで大切なことを、田中雅之さんに伺いました。

ラグジュアリーブランドのPRにおいては、非日常を味わえるかどうかが成功の鍵を握っています。さらに、携わる方々に喜んでもらえるよう、田中さんがさまざまな工夫を凝らされているというのも、おわかりいただけたのではないでしょうか。

また今後、ラグジュアリーブランドのPRに出会った際は、非日常的な空間や体験に着目してみると、今までとは違った見方ができるかもしれません。

本インタビューの後編では、ラグジュアリーの定義の変化や、ブランドの魅力を知ってもらうために大切なことについて伺っています。ラグジュアリーの素敵なところをたっぷりとお話しいただいておりますので、読み終わったあとはきっと特別な気持ちになれるはずです。

(取材・文:吉原緑子)


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田中 雅之(たなか まさゆき)

田中 雅之(たなか まさゆき)

ミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社 代表取締役。フランスやアメリカのラグジュアリー化粧品ブランドにて、PR&コミュニケーションを20年以上にわたり担当。その後、2015年に独立し、紹介制でPR・コンサルティングを行う「ミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社」を立ち上げる。現在は、化粧品やファッション、ホテルフレグランスなど、ラグジュアリーを主軸にさまざまな業界のPRやコンサルティングを手掛けている。

Instagram:
@miyabi_brandcommunications


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