「ラグジュアリーを取り入れることが、理想の自分に近づく後押しになる」田中雅之さんに聞く、ブランドの魅力の感じ方【後編(全2回)】
ラグジュアリーな商品・サービスに対して、どのようなイメージをお持ちですか?
「ご褒美として取り入れたい」「特別な気持ちになれる」「興味はあるけど、少しハードルが高い」といったように、ラグジュアリーの捉え方は人によってさまざまですよね。
ラグジュアリーな商品・サービスに対して、どのようなイメージをお持ちですか?
「ご褒美として取り入れたい」「特別な気持ちになれる」「興味はあるけど、少しハードルが高い」といったように、ラグジュアリーの捉え方は人によってさまざまですよね。
今回は、ラグジュアリーブランドに精通し、幅広い業界でPR・コンサルティングを手掛けている田中雅之さんへのインタビューの後編をお届けします。
ラグジュアリーの定義は、時代の流れによって変化していく
――ずばり、ラグジュアリーの定義はなんですか?
田中さん(以下、田中):ラグジュアリーの定義は時代とともに変化するものだと感じています。
以前は、"ラグジュアリー=ブランド品"という側面が強かったように思います。それが今では、単に高価なものではなく、唯一無二の商品や非日常的な体験を"ラグジュアリー"と定義づけるようになりました。「ブランド品であればよい」という考えが、終わりを迎えたわけです。
ラグジュアリーの定義が変化した要因には、消費者の感性が豊かになったことが挙げられます。時代の流れによって身のまわりの物や情報が増えたことで、より良いものを知る機会に恵まれるようになった結果ですね。
時代とともに移り変わる定義に合わせて、ラグジュアリーな商品・サービスも変わっていきます。これらを通じて、憧れの自分に近づけたり、特別な気持ちを味わえたりすることが、真の価値を感じることにつながるはずです。
――コロナ禍を経て、ラグジュアリーに対する消費者の動向はどのように変化したと感じていらっしゃいますか?
田中:人に見せるものから、自分を満たすためのものにお金をかける方向性にシフトしたと実感しています。
かつては、きらびやかなファッションや華やかに見せるメイクなど、外見の彩りを重視される方々のほうが多かったと感じます。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって外出・海外渡航が大きく制限され、自宅で過ごす時間が急激に増えました。その流れの中で、ラグジュアリー市場においては"心地の良い暮らし"を重視する傾向が顕著な変化として現れたのです。ステイホームを心地良いものにするために、肌触りの良いルームウェアや下着、お気に入りのアロマ、肌を整えるスキンケアといった、自分自身を癒すことにこだわる方々が増えたと感じています。
コロナ禍を経て、外見よりも内面への投資を重視する流れが生まれたのは、みなさんの心の状態や価値観が変わったからです。自分自身を満たすための"心のラグジュアリー"を大切にする考え方は、これからも続いていくように思います。
「憧れを叶えたい」という想いが、ラグジュアリーを取り入れる第一歩になる
――日本の消費者がラグジュアリーを求める動機には、どのようなものがあると思われますか?
田中:ひと言で表すと、"非日常を味わいたい"という想いです。
「一生もののジュエリーに出会いたい」「一流のレストランで食事を楽しみたい」「高級ホテルのスパで癒されたい」といった憧れは、誰もがもっているのではないでしょうか。そういった想いをきっかけに、ラグジュアリーな商品・サービスに辿り着くのだと思います。
また、先ほどお話ししたように、今では高級な商品を手に入れることよりも、非日常的なサービスを受けることに重きを置く方々が増えてきました。変化の理由の一つとして、ヨーロッパの影響があると私は考えています。
職業柄、ヨーロッパを訪れる機会が多いのですが、「ヨーロッパの方々は、日常とはかけ離れた体験を得ることにこだわりを強くもっている」とよく感じます。日本からフランスへ旅行される方々も多く、現地を訪れた際に「素敵なこだわりがあるな」と感じて、新しい価値観を取り入れるきっかけとなっているのかもしれません。ヨーロッパのラグジュアリーの価値観が、日本の方々に良いものとして受け入れられる傾向にあるのは、とても素敵なことだなと思っています。
ラグジュアリーブランドの価値を高めるには、消費者から信頼されつづけること
――より多くの方々にラグジュアリーブランドの魅力を知ってもらうために、田中さんが大切にしていることを教えてください。
田中:"信頼と真摯な態度"です。ブランドへの信頼が一度でも失われてしまえば、そのブランドの価値が高まることはないと考えるからです。
たとえば、とある商品が爆発的に売れたとします。一度手に取ってもらえた商品でも、本質的な良さやブランド独自の価値観が伝わらなければ、ブランドそのものの価値にはつながりません。商品を継続して使っていただくからこそブランドに対しての信頼が高まり、さらにはブランドの価値を構築することにもつながると思うのです。
ラグジュアリーブランドの構築では、ブランドの理念をもとに、商品・サービスのネーミングやコンセプトなどを考える必要があります。そのうえで、一時的な人気に頼るのではなく、ひたむきに商品・サービスの品質を高めることが欠かせません。この積み重ねが、お客様に選ばれつづけるブランドにつながると信じています。最終的に「○○の分野なら、このブランド」という地位を確立することができれば、商品・サービスがより一層際立つはずです。私自身としてはPRを通じて、この世にたくさんある素敵なラグジュアリーブランドを、より多くの方々に届けたいと思っています。
ミニコラム:田中さんがPRに携わった、スイス発のプレミアムスキンケアブランド『スイス・パーフェクション』
『スイス・パーフェクション』は、1988年にエイジングケア※1 の聖地であるスイスのモントルーで誕生したプレミアムスキンケアブランドです。ジャーマンアイリスの研究をもとに開発した、独自の植物細胞由来成分"Cellular Active IRISA®(セルラーアクティブ イリサ)"※2 をすべての製品に配合しています。この成分の魅力は、肌本来の健やかな美しさを引き出すサポートをしてくれる点です。
独自成分を配合したスキンケア商品は、世界各国の高級ホテルのスパで採用されており、ラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。
※1 年齢に応じたケア
※2 ドイツアヤメ根エキス(整肌成分)
スイス・パーフェクション SWISS PERFECTION 日本公式サイト
――スイス・パーフェクションのようなハイエンド向けブランドを、日本でより多くの方々に触れていただくために必要なことはなんですか?
田中:ブランドを支える"前輪と後輪"を適切に回転させることです。
まず前輪では、そのブランドの象徴となる商品・サービスを、新規のお客様に対して提供します。そして後輪には、ブランドに対する満足度を高めるためのより高品質な商品・サービスを、既存のお客様に向けて用意します。
特に、前輪となる"ひと目でそのブランド"だと認識できる商品・サービス"の存在は大切です。たとえば、「スイス・パーフェクションといえば、この美容液」といったブランドに対する共通認識が形成されるのが理想ですね。また、ハイエンド向けのブランドでは、「購入するのに勇気がいる」という価格に対するハードルが少なからずあります。そのようなときは、特別料金のトライアルセットを提供すると「一度使ってみようかな」と思われる方々が増えて、商品の良さを知っていただけるきっかけになるかもしれません。
過去携わったお客様のなかには、前輪の役割を果たす商品・サービスをまだ確立できていないブランドもありました。そんなとき、「まずは商品の良さをみなさまに知っていただきたい」と思い開催したのが、特別な体験型のイベントです。結果、商品を実際に手に取ってもらえたことで、その商品がブランドの象徴となり、認知度の拡大に成功しました。
これからも、両輪に携わらせていただけるPRのお仕事を通じて、ラグジュアリーブランドを日本でより広めていくことに貢献できればと考えています。
ラグジュアリーには、たくさんの憧れが詰まっている
前編に引き続き、ラグジュアリーの定義の変化や、ラグジュアリーブランドの魅力を知ってもらうために大切なことを田中雅之さんに伺いました。
時代の流れによって、ラグジュアリーにおいては心地の良い暮らしを重視する傾向が強くなっています。実際に、この数年間でルームウェアやアロマ、スキンケアなど、ご自身を癒すものにこだわるようになった方も多いのではないでしょうか。
自分自身を満たすための"心のラグジュアリー"という考え方を知り、大切にしてみると、毎日が輝くきっかけになるはずです。
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「非日常の演出と信頼の積み重ねが、ラグジュアリーをつくりあげる」田中雅之さんに聞く、ブランドの魅力の伝え方【前編(全2回)】
(取材・文:吉原緑子)
profile
田中 雅之(たなか まさゆき)
ミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社 代表取締役。フランスやアメリカのラグジュアリー化粧品ブランドにて、PR&コミュニケーションを20年以上にわたり担当。その後、2015年に独立し、紹介制でPR・コンサルティングを行う「ミヤビブランドコミュニケーションズ株式会社」を立ち上げる。現在は、化粧品やファッション、ホテルフレグランスなど、ラグジュアリーを主軸にさまざまな業界のPRやコンサルティングを手掛けている。
Instagram:
@miyabi_brandcommunications
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