失敗を引きずる、気分の落ち込みが続く...気持ちをうまく切り替えるには?

ちょっとした失敗をいつまでも引きずってしまったり、一度気分が落ち込むとなかなか立ち直れなかったり...。ふとしたことで気分が滅入り、メンタルが浮上しない状態が長く続く人が、40代以降の女性にも多く見られます。放置するとうつ状態になりかねない激しい気持ちの落ち込みは、なぜ起きるのでしょうか。

心理カウンセラーの半澤久恵さんは、「性格だから仕方ない」とあきらめている人が多いと指摘し、自律神経のしくみを知って自然にバランスを整える、"土台づくり"が大切だといいます。気持ちが沈みかけたときにできることや、自律神経の整え方について教えていただきました。

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自律神経のバランスが崩れると、心身が不安定になりやすい

――気持ちの切り替えがうまくいかず、落ち込みから抜け出せないのはなぜなのでしょう。

私たちの心と体は、活動中に働く交感神経と、休息中に働く副交感神経が、1日の中で交互に活性化することによって、すこやかな状態を維持しています。

■交感神経と副交感神経の1日のリズム

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ところが、激しいストレスを受けて緊張状態が続くと、この切り替えがうまくいかなくなり、心身にさまざまな不調が現れます

例えば、仕事をしているときなど心身が活動的なモードのときは、交感神経が優位に働いています。一方、終業後や休日といった活動的なモードが解除されるタイミングには、交感神経に代わって副交感神経が優位に働き始める――平時なら、こうして緊張と弛緩(しかん)を繰り返しながら心身の安定を保っているのです。

■交感神経が優位になっている状態

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しかし、転職したばかりだったり、上の役職に就いたりなど、「結果を出さねば」と意気込んで仕事に打ち込んでいる場合。それでも終業後や休日にうまくリラックスモードへ切り替えられればいいのですが、責任感が強く、がんばり過ぎて緊張・ストレス状態が長く続くと、あるとき心身が「もう無理」とシャットダウンして動けなくなってしまうことがあります。

これが、交感神経が働き過ぎていた反動で副交感神経が働き過ぎて、激しく落ち込んでしまった状態

■自律神経のバランス

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たいへんな試験が終わった後など、長く続いた緊張の糸が切れて気持ちや活動力が落ちてしまい、そのまま心身が安定しないことがあるのも、これと同じ原理です。

――性格によるものではないのですね。

普段はとてもポジティブで、うつとは無縁に見える人が急に心身のバランスを崩すことがあるように、性格はまったく関係ありません

緊張やストレスなど大きな負荷がかかった反動で気持ちが落ち込むのは、自律神経の働きから見ればごく自然な現象。そこで大切なのは、自律神経の切り替えにおける反動を、極端ではなく正常なリズムになるよう働きかけていくことです。

交感神経が活発化しているとき、うまく心身を休めることが重要

――具体的にはどう対処すればいいのでしょう。

ポイントは、気持ちが落ち込む前の過ごし方にあります。

緊張が続いていてストレスがかかっても、家に帰れば肩の力を抜いて過ごせている人や、良い睡眠をとれている人は、急にガクンとバランスが崩れることはありません。疲れていたり、気持ちが張り詰めていたりするときは、できる限り心と体を休める時間をとりましょう

といっても、ストレスが溜まっているときは、どうしてもそのことに意識がいってしまいますから、休んでいるつもりでも、実はまったく休めていないことが少なくありません。

特に、他人からの期待に応えようとついがんばってしまう人や、体力があって無理しがちな人は、意識的に心と体をオフにし、「何もしない時間」を作って、自分で考えている以上に休む習慣をつけてください

――ただ、「何もしない時間」が苦手な人も多そうです...。

そうですね。常に努力し続けていないと人に認めてもらえない、社会的に価値がある仕事をしてこそ存在する意味があるといった潜在意識があると、ただそこにいるだけの自分を認めてあげられず、常に何かをしていなければならないと思ってしまいます

こういった思いに至ってしまうのは、幼少時の出来事やトラウマに起因していることが多いので、根本的に解決したい場合は心理カウンセラーやセラピストといっしょに紐解いていくことをおすすめします。

物事のマイナス面だけでなく、プラスの面も見て気持ちを楽に!

――気持ちを切り替えやすくする考え方や、行動のコツはありますか?

「失敗しちゃった、だから自分はダメなんだ」ではなくて、「失敗したかもしれないけど、できたこともあるよね?」「この体験から学べることはなんだろう?」と、自分に問いかけてみてください。

物事のマイナスの面ばかりにフォーカスせず、できたこと、うまくいったことなど、プラスにも目を向けるようにすると、かなり気持ちが楽になると思います。

あとは、能動的に状況を変えること。ずっと一人ぼっちでいると、心も体も凍りついて、うつ状態になったり、だるくて動けなくなったりします。できるだけ人と直接的なつながりを持ちましょう

落ち込みそうになったときに実践できるお守りのような方法として、パニック障害のお話のときにご紹介した「タッピング」もおすすめ。不安、恐怖、憂鬱、自責などの感情に気づいたら、「不安だな」「落ち込みそうだ」などつぶやきながら、眉頭から目の下、脇の下、鎖骨の下の順に、人差し指と中指でトントンと軽く叩いていくと、次第にリラックス効果が得られます。声が出せないときには、ただタッピングするだけでも大丈夫です。

■タッピング...心が落ち着く、誰でもいつでもできる簡単な方法

外にいてすべてのツボにふれられない場合は、どこか1ヵ所、もしくは手首の内側を2本指でトントンと叩くだけでもいいですよ。

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不安定で、緊張をしいられる場面の多い時代ですが、「元気に動く」「落ち着いてゆっくり休む」「また活動する」という自律神経の動きを意識し、バイオリズムを整えて、自身の気持ちの波を上手に乗り越えていきましょう。

そういったことが自分でできない、思いと反対の行動をしてしまうといった場合は、セラピストやカウンセラーに頼って、一緒に取り組んでみてくださいね。


お話を伺ったのは...

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半澤久恵(はんざわ・ひさえ)さん

心理カウンセラー/セラピスト

大学卒業後、出版社へ入社。体調を崩したことをきっかけに、興味のあった心と体に関わる仕事をするため、アロマセラピーの道へ。サロンでセラピストとして働きながら、整体やアロマスクールの講師も務める。2012年にOAD心理セラピストの資格を取得。現在は自身のサロン「AROHAM」にて心と体にまつわる個人セッションを行うほか、心理学の講師としてセミナーなども開催している。
https://www.aroham-kee.com/

※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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この記事は、働く女性の医療メディア
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