子供が引きこもりになったら?悩んだら意識してほしいこと
子育ては、親の思うようにはいかないもの。わかってはいても、子供の成長ぶりに不安を感じ、悩みを抱える親は少なくありません。
ILACY(アイラシイ)世代の人のたちは思春期の子供を持つ親が多く、子供の不安定さや気持ちの揺れに接して戸惑うこともあるでしょう。特に、我が子が不登校になったり、引きこもってしまったりした場合、親の悩みは深くなりがちです。
そこで、なかなか周りにうまく溶け込めずに引きこもってしまう子供に対して、親はどのように接するのがいいのか、心理カウンセラーの半澤久恵さんに教えていただきました。
思春期の子供はコミュニケーションをとるのが難しくなる
──子供が成長するにつれて、親の悩みも変わっていきますね。
子供が乳幼児のときは夜泣きや後追い、お友達との関わり合いに悩み、思春期になると反抗的になって不機嫌な態度をとり始めて手を焼くなど、子供の成長とともに親の悩みも形を変えながら続いていきます。
ILACY(アイラシイ)世代になると、お子さんも高校生、大学生になっていることが多いですよね。そのくらいの年代だと、学校に行き渋る、社会に上手くなじめず自宅に引きこもる、といったお悩みが多い印象です。
例えば、高校生のお子さんが不登校になってしまって、進学できるかどうかわからないとか、バイトもしていないし趣味もなさそうで、将来がすごく不安だというお母さんもいますね。
――そういう方は、お子さんとどのように接しているのでしょうか。
「気が向いたときに学校へ行ってみては?」「大学はどうするの?」「バイトしてみたらどう?」などと話しかけてはみるものの、干渉を嫌がって怒ったり、話をそらされたり、ひどいときは部屋から出てこなかったりして、解決の糸口が見つからないとおっしゃることが多いです。
お子さんが思春期に入ると、自立心が高まって親離れする時期でもありますから、コミュニケーションのとり方が難しいですよね。
子供が何も話してくれないから、何が原因で学校に行けなくなったのか、何を考えているのか、これからどうしたいのかがわからない。毎日、何もしないでずっと家にいる子供を見ていると、「うちの子はもうだめだ」と思い詰めてしまうパターンがよくあります。
子供だってつらい。「引きこもりは良くない」というレッテルをはがそう
──引きこもるようになった子を前に、冷静でいられない親御さんの気持ちも理解できる気がします。
自分の子供が心配でたまらない、自分の子育てが間違っていたのではないか、周囲からはどう見えているんだろうなど、さまざまな感情が押し寄せますよね。
でも、目の前にある事実は「子供が家にいる」、ただそれだけです。それなのに、なぜ人生の終わりのように感じてしまうのでしょうか。
それは、同年代の子供たちとの比較や、親自身が理想とする子供像、ネットの情報などによって生まれるフィルターを通して見ているから。自分の価値観とは違う我が子の行動を受け止めきれず、心配や不安が先立って、「まるでダメな子のように見えてしまう」のです。
──事実をそのまま見るのではなく、自分の軸で事実を歪めて見ているのですね。
大切なのは、「引きこもり=悪いこと」「引きこもっている子=ダメな子」といったレッテルをはがして子供を見ること。親から見ると「何もしていない」と見えても、この期間に自分の好きなことを突き詰めていたり、本当にしたいことは何なのだろうかと深く自分に向き合っていらっしゃったりするお子さんもいます。
まずは親が引きこもりに対して持っている前提を捨てない限り、子供は親が発しているネガティブなメッセージを受け取り続けることになるでしょう。
――そうした状態が続くと、ますます心を閉ざしてしまうかもしれませんね...。
問題を前に進めるには、親が子供とフラットに向き合い、子供の気持ちをくみ取ることが大切です。
誰よりもつらいのは子供自身。子供も今の自分に対するもどかしさや気まずさ、いら立ちなど、複雑な感情と必死で戦っているはずです。親がそこに気付かないままもがいても、親のストレスと子供の自己否定感が増していくだけなんですよ。
ここを解決するために、カウンセリングでは「どうすれば子供を学校に行かせることができるか」を考えるのではなく、引きこもっている子供を見て親が何を感じているのか、それはなぜなのかを掘り下げることから始めていきます。
子供は自分とは別の人間――まずは自分の内面に向き合って
――どうすれば、自分の内面の感情とその背景を知ることができますか?
まずは、「このままでは進学できないかもしれない」「人付き合いが苦手では社会に出てやっていけない」「普通は学校へ行くものなのに」...といったモヤモヤした気持ちや、子供の将来を考えたときにわき上がってくる漠然とした不安感など、渦巻く感情をただ見つめてみましょう。
次に、自分が何を、なぜ怖がっているのか、子供にどうしてほしいのか、心の中にある恐れのストーリーとその内訳を具体的に言葉にしてみてください。
すると、
・子供が大学に行けないことを怖がっている。なぜなら、私自身が大学に行けなくて悔しい思いをしたから
・将来、お金で苦労してほしくない。だから、安定した職業に就くためにきちんと進学してほしい
といったように、自分の理想や後悔を子供にのせていることに気付くでしょう。「〜すべき」のような一般論、常識論にとらわれていた自分を知る場合もあるかもしれません。
■自分の心の奥底にある恐れのストーリーを掘り下げると...
そうやって、心の奥底にある気持ちを認めることができると、子供を親の価値観でなんとかしようとする気持ちが薄れていきます。
「子供は子供。自分とは別の人間」。そう思えれば、子供の現状を必要以上に不安視しなくなるでしょう。
――「親に優しくしたいけど、できなくてつらい」といったお悩みの回でも、同じようなことをおっしゃっていましたね。
そうですね、そちらも同じといえます。ただ、ここでお話ししたことを知識としてインプットしても、実際に自分の子が不登校になったとしたら、自分とは違う一人の人間だと冷静に受け止めるのはとても難しいことですよね。
こういった知識がすぐに結果に結び付かなくても構いません。少しずつご自身の内面と向き合い、引きこもりに対するイメージのフィルターを外して、お子さんと向き合ってみてください。そうすれば、ありのままの子供を受け入れて、自分やほかの誰かと比較せず、その子だけの人生を考えられるようになるはずです。
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お話を伺ったのは...
半澤久恵(はんざわ・ひさえ)さん
心理カウンセラー/セラピスト
大学卒業後、出版社へ入社。体調を崩したことをきっかけに、興味のあった心と体に関わる仕事をするため、アロマセラピーの道へ。サロンでセラピストとして働きながら、整体やアロマスクールの講師も務める。2012年にOAD心理セラピストの資格を取得。現在は自身のサロン「AROHAM」にて心と体にまつわる個人セッションを行うほか、心理学の講師としてセミナーなども開催している。
https://www.aroham-kee.com/