がんばり屋さんは要注意!?休んでいるようで、実は休めていない理由
心身のバランスを安定させるポイントとして、「自律神経を上手に切り替えること」が重要であると、これまでに本連載でお伝えしてきました。
疲れや体の不調などで心身に過度なストレスがかかった状態が長く続くと、その反動で、あるとき心と身体がシャットダウンしてしまうことが。すると、激しい落ち込みを感じたり、まったく動けなくなってしまったりします。
こういった自律神経の激しい動きが起こらないためにも、意識的に心と体を休めることが大切。しかし、女性の中にはそもそも「休む」ことが苦手で、休んでいるつもりでもまったく休めていない人は少なくありません。
そこで、なぜうまく休むことができないのか、どうすれば本当の意味で心身をリラックスさせることができるのかについて、心理カウンセラーの半澤久恵さんから2回にわたって教えていただきます。
前編となる今回は、しっかり休んでいるつもりでも実は休めていない、そのメカニズムについてお話しいただきました。
休めないのは「何もしない自分」を認められないから
――以前、失敗を引きずったり、落ち込みから抜け出せなくなったりする背景には、自律神経の乱れがあることを教えていただきましたよね。
心身の安定は、活発に活動しているときに働く「交感神経」と、リラックスしてくつろいでいるときに働く「副交感神経」がリズム良く切り替わることで保たれています。
ところが、交感神経が優位な状態が続いた後に、うまく副交感神経が働いて心と体を休めることができないと、心身のバランスが崩れてしまうんです。
そのため、疲れや緊張を感じたら、意識的に心と体をオフにし、何もしない時間を作りましょうとお話ししました。
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――でも、「何もせずに休むこと」が苦手な人は少なくなさそうですよね。
責任感が強い人や、体力があって無理しがちな人、他人から認められる仕事をしなければ存在価値がないと感じてついがんばってしまう人は、「何もしないでただそこにいる」自分を受け入れるのが苦手なケースが多いですね。
結果として、特に仕事をしていないのになぜか疲れているなど、本当の意味で休むことができていない状態に陥り、心身に悪影響を及ぼしてしまいます。
――なぜ、何もしない時間を過ごす自分を許してあげられないのでしょう。
休みの日にどうしても動いてしまう人は、自分でもなぜ動いてしまうのかわからないけど動く、動かずにいられないことがほとんど。例えば、一晩、もしくは数日放っておいても問題ない仕事や家事なのに、どうしても動かずにはいられないのです。
こうしたタイプの人に、「休みの日はパソコンやスマホの電源を切りましょう」「後回しにできることはして、ゆっくり休みましょう」などとアドバイスをしても、本質的な解決にはつながりません。
その人の中にある、「何もしないでいることの居心地の悪さ」が解消されない限り、落ち着かない気持ちは消えないからです。
――では、どうすればいいのでしょうか?
休みたい気持ちとは裏腹に活動してしまうとき、そこには過去の経験に紐付くトラウマや不安が存在しています。その行動をしないとどんな気持ちになるのか、どんな思いがわき上がってくるのかを考えてみてください。
自分の中にある気持ちがなんとなく見えてきたら、その気持ちに「不安ちゃん」「そわそわちゃん」というような名前をつけて、「どうしてそう感じるの?」と聞いてみましょう。
キャラクターを立てることで客観的に気持ちを読み解くことができ、次のような自分の心の声をキャッチしやすくなるかもしれません。
・自分がだらしない感じがするから
・なんとなく落ち着かないから
・他者から「ダメな人」だと思われそうだから
――心の声を聞くと、どういう思いが自分を動かしているのかが見えてくる気がします。
そうですよね。その人が置かれている状況は、客観的に見れば「流しに食べ終わったお皿がある」「仕事相手からメールが来ている」、ただそれだけ。それに対して何もしないでいる事実を受け入れがたいと感じたり、不安に思ったりするのは、その人自身の思い込みに基づくセルフイメージや、何かしらの信念があるからなんです。
心の声を聞くことができたら、何をきっかけにそう思うようになったのか、セルフイメージや信念が生まれたきっかけをたどってみましょう。おそらく、自分を本当の意味で休ませてくれない何らかの事実には、感覚や感情と結び付く経験や思い出があるはずです。
例えば、
・昔、少しでも物を出したままにしておくと、いつも親に「だらしがない」「だめね」といわれてイヤな思いをしていた
・仕事で評価されるために努力し続けなければいけない。それでこそ立派な社会人だ。一方で何もしない奴は...と呆れ顔で話す父の話を繰り返し聞いていた
・メールの返信をしないで怒られている人を見て、自分も怒られているような緊張感を感じた。あんなふうな目に遭いたくない。しっかりしなければと思うようになった
といった記憶があるかもしれません。
――確かに、頭では「そろそろ休まないと心身が限界」とわかっていても、一方で何もしないことによる不快感や不安感、罪悪感があると、そちらの気持ちが上回って、体が動いてしまいますよね...。
そうなんです。そこで、不安ちゃんやそわそわちゃんと対話して、衝動の源であるセルフイメージが作られるきっかけを洗い出すことから始めましょう。それが、無意識のうちに自分を縛るルールを生んでいるのかもしれません。
休んでいるつもりなのに実は休めていない状態は、きっと自分でもどうしたらいいかわからなくてつらいと思いますが、休もう休もうと考えるだけでは現状を変えることができません。
そこにはセルフイメージが生んだ自分を縛るルールがあることを知り、心を紐解きながら、少しずつそのルールから自身を解放していきましょう。それが、状況を改善するポイントになります。
次回は、今回ご紹介したセルフイメージや自分を縛るルールから解放され、本当の意味で自身を休める方法を伺います。
お話を伺ったのは...
半澤久恵(はんざわ・ひさえ)さん
心理カウンセラー/セラピスト
大学卒業後、出版社へ入社。体調を崩したことをきっかけに、興味のあった心と体に関わる仕事をするため、アロマセラピーの道へ。サロンでセラピストとして働きながら、整体やアロマスクールの講師も務める。2012年にOAD心理セラピストの資格を取得。現在は自身のサロン「AROHAM」にて心と体にまつわる個人セッションを行うほか、心理学の講師としてセミナーなども開催している。
https://www.aroham-kee.com/