年齢を重ねるとなぜ太る?その理由と解消法
「若いころと比べて太りやすく、やせにくくなった」「体重は変わらないのにおなか周りに余分な脂肪がついてしまった」など、年齢を重ねるほど体型や体質の変化に戸惑う大人女性は多いもの。なぜ、そういった現象が起こるのでしょうか...?
今回は、東京ミッドタウンクリニックの特別診察室長を務める内科医師・渡邉美和子先生に、太りやすくなるメカニズムや、改善するための運動法などについて教えていただきました。
太りやすい体質の一因は、たんぱく質不足
――30代のころと変わらない生活をしているはずなのに、なぜ大人女性は太りやすくなってしまうのでしょうか?
運動不足や活動量の低下など、大人女性が太ってしまう原因はいろいろありますが、意外に大きく影響するのがたんぱく質不足。若いころと比べて、食べる量は変わらないのに太りやすくなったという声が多くなる中年以降は、たんぱく質が足りなくなっていることが多いです。たんぱく質は、筋肉はもちろん、あらゆる臓器や体内の調整に役立っているホルモンの材料となりますので、たんぱく質の摂取が減れば筋肉量を維持することができず、消費エネルギーも低下して脂肪がつきやすくなってしまいます。
筋力が落ちると、例えば歩くときも歩幅が小さくなったり、姿勢が悪くなったりして、太ももや背筋といった大きな筋肉が使えなくなります。そうすると活動量が落ちて、ますます太りやすくなってしまうのです。
日々の食事では、パンやおにぎり、麺類など、手軽に食べられる物で済ませないで、肉や魚、乳製品、卵など、たんぱく質を意識的に取り入れるようにするといいでしょう。また、炭水化物を減らす替わりに、オメガ3脂肪酸のようないい油をとることで満腹感が得られ、空腹感を防ぐことができます。
――脂肪の代謝を助けてくれる女性ホルモンが減ると、太りやすくなると聞きます。閉経後に女性が太ってしまうのは仕方がないのでしょうか?
脂肪には内臓脂肪(内臓の周りを埋め尽くすようにつく脂肪)と皮下脂肪(つかめる脂肪)があり、皮下脂肪にはエネルギーの貯蔵や保温といった体を守るという側面があります。また、脂肪からは「アディポサイトカイン(※)」が分泌されることがわかっており、その中でも善玉のアディポサイトカインである「アディポネクチン」は、糖尿病や動脈硬化を抑える効果が知られています。
※アディポサイトカイン...アディポ=脂肪とサイトカイン=細胞から分泌される、何らかの役割を担ったたんぱく質。
つまり、皮下脂肪が増える「小太り」は一概に悪いとはいえません。ガリガリに痩せているより、ちょっとぽっちゃりしているほうが寿命は長いという報告があるのは、この皮下脂肪のメリットがあるため。一方で内臓脂肪が増えると、アディポネクチンの分泌が減る、悪玉アディポサイトカインの分泌が増え、血圧を上昇させたり、脂質異常症や糖尿病発症の引き金になったりします。
このように、小太りの実態が皮下脂肪なのか内臓脂肪なのかによって、健康状態は大きく変わってしまいます。そして、体が女性ホルモン(エストロゲン)に守られている閉経前は、内臓脂肪より皮下脂肪のほうがつきやすい傾向にありますが、エストロゲンを失う閉経以降は圧倒的に内臓脂肪がつきやすくなるんです。閉経後の肥満は乳がんの確実な危険因子であり、肥満の予防には注意を払う必要があります。
――内蔵脂肪がつき過ぎてしまうのを避けるために心掛けたほうがいいことはありますか?
閉経を迎えたらまず有酸素運動を日常生活に取り入れること、食事については、量を無理に控えるというより、「内容を考える」ことが大切でしょう。
幸いなことに、内臓脂肪はとても減らしやすいもの。運動や食事の改善などを行えば、皮下脂肪より落とすのは簡単です。体重が落ちるよりも先に内臓脂肪が減っているとイメージしていただくと張り合いになるでしょう。また、アルコールは中性脂肪として溜まりやすく「エンプティーカロリー(※)」であることを考えると、代謝を活発化させる栄養を含む食事を減らすよりもアルコールを減らすほうが圧倒的に内臓脂肪を減少させてくれます。
※エンプティーカロリー...身になる栄養のない(空の)カロリー
もちろん、これまでのテーマでもお話ししてきたように、夜遅くに食事をとることをやめる、できるだけ0時までに就寝し、少なくとも5時間睡眠をとるといったことは太りにくくするためには重要ですよ。
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「骨盤底筋群」を鍛えてぽっこりおなかを改善!「ながら運動」が効果アリ
――皮下脂肪が体を守ってくれるとはいえ、脂肪がつきすぎて下っ腹がぽっこりしているのは、やはり悩みどころです。何かいい方法はありますか?
部分痩せは本当に難しいですね。ですが、プロポーションだけでなく女性にとって大事な臓器が集約される骨盤内臓器の機能を維持するためにも、骨盤底筋を鍛えることでの「ぽっこりお腹対策」は大切です。「ながら運動」を、無理なく続けることを目指しましょう。「ちゃんと運動をしなくては」と思うと、精神的な負担になりますからね。骨盤底筋群とは、子宮や膀胱、直腸を支えている筋肉で、ゆるむと下っ腹が出てしまいます。加齢とともに衰えやすくなり、尿もれの原因にもなりますから、大人女性は鍛えておきたいですね。
では、骨盤底筋群を鍛える簡単な方法を4つ紹介しましょう。
1 座りながら!簡単トレーニング
骨盤底筋群の一番簡単な鍛え方は、椅子に座った状態で姿勢を正し、肛門や腟をきゅっと締めてゆっくり5秒数えましょう。下っ腹の奥のほうにある筋肉に、ぴりぴりと刺激が伝わるのがわかると思います。
2 足裏ゴロゴロトレーニング
骨盤底筋群は足の筋肉ともつながっているので、足の裏を使うことでも鍛えられます。患者さんにおすすめしているのは、足の裏でボールを転がす方法。
市販のポジションボールが使いやすいですが、ゴルフボールやテニスボールでもいいです。座ったままでできるので、デスクワークの合間に鍛えられますよ。
3 ペットボトルのふた踏みトレーニング
袋にペットボトルのふたを70~80個入れ、なるべく不規則な形にしてそれをぎゅっと踏みつける足底に刺激を与えます。これならキッチンで料理をしながらでもできますね。
4 足指引っ張りトレーニング
足の指と指の間に1m程度の長さのゴムをはさんで引っ張り、外れないように指に力を入れると、足の裏の筋肉をとても使うことができます。親指と人差し指の間、次は人差し指と中指の間、と順番に全部の指で行うと力を入れにくい弱い箇所がわかりますから、そこを重点的に鍛えます。これも、テレビを見ながらできますね。
こういった「ながら運動」を習慣化することで、「やらなきゃいけない」というハードルが下がり、気軽に運動ができますよ。
年を重ねるごとに、運動が健康にも大きく関わってきます。太りやすくなったと感じ始めたときが、生活に運動を取り入れる絶好のチャンス。筋力は使わなければ衰えてしまいますから、まずは簡単に、楽しくできることから始めて、継続するようにしてくださいね。
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