肌や口が乾燥する「ドライシンドローム」。腟の乾燥にも注意!

更年期に女性ホルモンが減少すると、コラーゲンの量や皮脂の分泌量が減り、肌や粘膜の乾燥が引き起こされます。更年期以降に、肌、鼻の中、口の中、腟などが乾燥する、「ドライシンドローム」に悩まされる女性が多くなるのはそのためです。
ここでは、ドライシンドロームが起こる原因や、中でも自分では気付きにくい膣の乾燥(ドライバジャイナ)の症状や予防・改善法についてご紹介します。

女性ホルモンの減少がドライシンドロームを招く

肌が乾く「ドライスキン」、鼻が乾く「ドライノーズ」、口が渇く「ドライマウス」、腟が乾燥する「ドライバジャイナ」。最近では、こうした全身の乾燥症状をひとつの症候群として捉え、ドライシンドロームと呼ぶようになりました。

特に、更年期の女性は、女性ホルモンの減少に伴い、全身が乾燥しやすくなります。中でも、次のような症状に悩まされる人が多いと考えられています。


肌が乾燥する「ドライスキン」

ドライスキンは、皮膚の水分や皮脂が不足することが原因で起こる症状。更年期以降に女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減ると、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の量も減るため、皮膚の保湿力が弱まり、弾力が衰えます。それによって、皮膚が外界からの刺激を受けやすくなり、乾燥やかゆみが悪化しやすくなります。

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鼻の中が乾く「ドライノーズ」

ドライノーズは、女性ホルモンの減少によって鼻の粘膜が乾くことに加え、乾燥した環境にい続けることで起こりやすくなります。おもな症状として、鼻の中が乾燥して痛みを感じる、ムズムズする、頻繁に鼻をかみたくなる、鼻血が出やすい、鼻が詰まりやすいといったことが挙げられます。

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口が渇く「ドライマウス」

ドライマウスは、唾液の分泌が減り、口や喉が渇く症状です。おもな症状として、口の中や舌が痛む、しゃべりにくくなる、口の中がネバネバする、食べ物が飲み込みにくいといったことが挙げられます。また、ドライマウスは、歯周病や虫歯、口臭の原因にもなります。

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腟が乾燥する「ドライバジャイナ」

ドライシンドロームは、腟内や腟周辺の皮膚にも起こり、この症状をドライバジャイナと呼びます。腟内が乾燥することで自浄作用が弱まり、炎症を起こしたり、かゆみや痛みを引き起こしたりしやすくなります。

腟が乾燥するドライバジャイナの症状って?

自覚しやすい目の乾きや口の渇きに対して、腟の乾燥は、なかなか自分では気付きにくいものです。特に、女性ホルモンが減少する更年期の女性は、知らないあいだに腟が乾燥し、トラブルの温床になっていることも...。

腟が乾燥すると、腟の入り口付近がヒリヒリするといった不快症状を覚えるほか、腟内の自浄作用が衰え、細菌に感染しやすくなったり、炎症を起こしたりする場合もあります。ドライバジャイナが疑われる症状は、下記のとおりです。


腟の入り口付近に違和感がある

腟内だけでなく、腟の周辺の皮膚にも起こるドライバジャイナ。乾燥がひどくなると、少しの刺激でもヒリヒリとした痛みを感じやすくなり、下着がすれる、自転車に乗るのがつらい...という風に、日常生活に影響が出ることも。また、性交時に痛みを感じることもあります。

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腟炎を起こす

腟粘膜の上皮細胞にはグリコーゲンという物質が含まれており、それが粘膜といっしょにはがれ落ちると、ブドウ糖に変わります。さらに、そのブドウ糖が腟の常在菌によって乳酸に変わることで、腟内のpH(ペーハー)を酸性に保って細菌の侵入・増殖を防ぎます。

年齢とともに女性ホルモンの分泌が減ると、グリコーゲンも減り、腟内を酸性に保てなくなってしまいます。腟を守る力が弱くなることによって炎症が起こる状態を、萎縮性腟炎といい、腟の痛みだけでなく、排尿時に痛みを感じるといった不快症状が現れることもあります。

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尿がしみる

腟萎縮は、外陰部や尿道にも影響します。粘膜がひきつれて、尿道口の位置が引き込まれたり、尿が腟に入り込みやすくなったりして、痛みを引き起こすこともあります。

また、時間が経った尿はアルカリ性に変化し、肌を刺激します。腟の外側の皮膚が乾燥すると、排尿時に尿がしみるほか、肌がかぶれるといったトラブルにつながることもあります。

更年期以降も腟の潤いを保つ5つの対策法

更年期の女性の多くが悩まされるドライバジャイナですが、症状をよく知りケアをすることで、腟の潤いを保ち、腟トラブルを軽減することができます。ドライバジャイナの症状が出る前から、下記のようなケアを心がけましょう。


デリケートゾーン専用のケア製品を使用する

ドライバジャイナを防ぐには、まずデリケートゾーンを清潔に保つことが大切です。デリケートゾーンは、腕やおなかなどとはpH値が異なり、雑菌を侵入させないために酸性が強くなっています。一般的なボディソープはpH値が9.0~11.0のアルカリ性で洗浄力が強いため、そのまま使用してしまうとデリケートゾーンのpH値が中性に傾き、自浄作用が落ちてしまいます。

pH値が5.0~7.5の弱酸性から中性のデリケートゾーン専用ソープを使うことで、腟の自浄作用の低下を防ぐことが可能です。

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正しい洗い方を習慣化する

デリケートゾーンは、最初にアンダーヘア、次に尿道口まわり、腟口、肛門という順番で洗います。腟口と尿道口の両側にある大陰唇と小陰唇のヒダの内側は、恥垢(ちこう)と呼ばれる白いカスのような汚れが溜まりやすいため、特に丁寧に洗いましょう。

洗うときは、ゴシゴシこすらないこと。肌に負担をかけることなく広い範囲を洗えるよう、ソープをしっかり泡立てるといいでしょう。

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デリケートゾーン専用ジェルなどで保護する

洗顔後に何もしないと肌が乾燥するのと同じように、デリケートゾーンも洗ったままにしておくと乾燥してしまいます。

入浴後は、タオルで軽く押さえるようにして、水分を拭き取ります。その後、デリケートゾーン専用のジェルやクリームなど、保湿剤を使って保護する習慣をつけましょう。


腟坐薬やHRT(ホルモン補充療法)といった選択肢も

腟の乾燥だけでなく、萎縮性腟炎になってしまった場合や、ほかの更年期の症状が気になる場合は、女性ホルモンのエストロゲンが含まれている腟坐薬を挿入する、あるいはHRT(ホルモン補充療法)といった方法もあります。まずは、どんな治療が向いているか、婦人科に相談するといいでしょう。

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レーザーで治療する

近年注目されているのが、炭酸ガスレーザーによる治療です。これは、顔のたるみの改善やリフトアップのために使われてきた技術を腟壁用に応用したもので、腟内に専用の機械を挿入し、専用のレーザーを数分間照射します。その刺激で腟粘膜の細胞が活性化され、腟の厚みや潤いを取り戻すことができます。

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早めのケアでドライバジャイナの予防・改善を

ドライバジャイナは、なかなか自分では気付きにくいもの。また、デリケートゾーンのことは人に話しにくいため、一人で悩んでいる人も多いと思います。

ドライバジャイナによる不快症状を予防・改善するために、この記事を参考にして、できる範囲でケアをしてみてはいかがでしょうか。


※掲載している情報は、記事公開時点のものです。
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