日々の仕事や家事に忙しい更年期世代の女性の中には、腰痛や肩こりに悩まされている人が多いでしょう。とはいえ、仕事も家事もしないわけにはいかず、症状があってもあきらめてしまいがち。
ただ、その慢性的な痛みは、骨盤の歪みが影響しているかもしれません。骨盤の歪みを調整することで、腰痛や肩こりはもちろん、腹部が圧迫されていることで起こるぽっこりお腹や、便秘が改善される可能性も。
そこで今回は、更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」の代表理事で、更年期トータルケアインストラクターの永田京子さんに、手軽に骨盤の歪みを調整できるエクササイズを教えていただきました。
骨盤の歪みが体に及ぼす影響とは?
――「骨盤の歪み」はよく耳にする言葉ですが、具体的にはどのような状態のことを指すのでしょうか?
骨盤自体は骨なので、ぐにゃぐにゃと歪むことはありません。ですから、「骨盤の歪み」とは、骨盤周りの筋肉の歪みや偏りをいいます。
――骨盤が歪んでしまう原因には、どのようなことがありますか?
仕事や家事など日々の生活を送る中で、骨盤が歪んでいない人はいないといって過言ではありません。
それに加えて、例えば
・片方の脚ばかり組む
・片方の肩や手でバッグを持つ
・電車内で立っているときに片方の脚に体重をかけて立つ
・デスクワークで長い時間、同じ姿勢でいる
・いつも横向きに丸まった姿勢で寝ている
・ヒールの高い靴をよく履いている
・運動不足で腹筋が弱っている
といった行動が、骨盤をより歪ませてしまいます。
――骨盤の歪みを放置してしまうと、体にどのような影響があるのでしょうか?
骨盤は上半身と下半身をつなぐ役割をしているので、そこが歪んでしまうと体にさまざまな影響が出てきます。
代表的なものとしては、
・腰痛
・肩こり
・頭痛
・ひざの痛み
・ぽっこりおなか
・便秘
・胃もたれ
などを引き起こすんですよ。
骨盤の歪みをチェックしよう
――自分の骨盤がどう歪んでいるのかが、わかる方法はありますか?
簡単にチェックする方法があるのでご紹介しましょう。その場で足踏みするだけです!
<骨盤のゆがみのチェック方法>
1. スタート地点を確認する
2. 周囲の安全を確認したら、目を閉じてその場で足踏みをする(50歩)
3. 目を開けて、最初の立ち位置からどの方向にずれたかをチェックする
※注意:足踏みをする際、想像以上に移動してしまうことがあります。骨盤の歪みチェックをするときは周囲に障害物がないかを確認し、安全なスペースを確保してから試してください。
・スタート地点よりも前に進んでいた
一番多いのがこのタイプです。骨盤が前傾して反り腰になっているため、おなかがぽっこり出やすくなるほか、お腹の重みを腰で支えているので腰痛になりやすくなります。
・スタート地点から左右どちらかにずれていた
骨盤の左右に歪みがあるタイプ。左右のバランスが偏っていると体の動きに負担が掛かり、肩こりや腰痛、頭痛が起こりやすくなります。
・スタート地点から後ろに下がっていた
骨盤が後ろに倒れているタイプ。猫背になりやすく、それによって腹部が圧迫されるので、三段腹や便秘になりやすくなります。また、肩こりに悩まされる人も多いです。
骨盤周りの筋力を鍛えて歪みを調整しよう
――骨盤がどう歪んでいるかがわかったところで、この歪みを整えるにはどうすればいいのでしょうか?
お伝えしたとおり、骨盤の歪みは骨盤周辺の筋肉の歪みでもあります。逆にいえば、筋力の低下が骨盤の歪みにつながることでもあるので、太ももの内側にある内転筋やお尻、足の付け根といった骨盤周りの筋肉を鍛えましょう。
今回ご紹介するエクササイズは、骨盤の歪みが調整できるだけでなく、尿もれや内臓下垂、O脚の予防・改善にも効果が期待できますよ。
<骨盤の歪みを整えるエクササイズ>
1. 両足のかかとをくっつけて立ち、つま先を90°以上になるように開く
2. かかとをつけたまま床から浮かせて、一拍置いてから下ろすのを10回行う
ポイントは、かかとを床から上げたときに、かかと同士が離れないようにすること。
また、かかとを上げ下げするスピードも、かかとを上げてひと呼吸置いてから下ろすイメージで行っていただいたほうがいいと思います。
――実際にやってみると、想像以上にきついのでびっくりしました。
そうなんです。このエクササイズでは、骨盤周辺の筋肉を使っている感覚がかなりあると思います。つま先を90°以上開いたまま上下するのがつらい場合は、多少狭めても大丈夫です。
また、かかとを上げ下げするときにふらついてしまう場合は、壁やテーブルに手を添えて行ってもOK。転倒しないように注意してくださいね。
――最初のうちはきついかもしれませんが、続けていくうちに慣れていきそうですね。
2週間程、毎日続けていただくと、エクササイズの動きはもちろん、日常生活の快適さもだいぶ変わってくると思います。というのも、今回のエクササイズは太ももやお尻など、大きな筋肉にアプローチしているので、比較的結果が出るのも早いんです。
大きく動くことなくできるので、電車やエレベーターを待っているとき、歯磨きをしているときなど、わざわざ時間を作らなくても日常生活の中に取り入れられます。
骨盤は体の中でも特に大切で、鍛えておくべき部分ですので、少しでも心地良く生活を送るためにも、早いうちからこのエクササイズを実践してくださいね!
お話を伺ったのは...
永田京子(ながた・きょうこ)さん
兵庫県出身、愛知県小牧市在住。2児の母。東映アカデミーに所属し、役者として舞台やドラマなどで活躍した後、ピラティスや整体、経絡、アロマ、リフレクソロジーなどを学び、ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとしての活動を開始。受講者の声と、更年期障害が悪化して苦しむ母を見ていた経験から、女性ホルモン・更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」を創設した。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう「the change of life」の意。著書に「女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操」(三笠書房)があるほか、先日「はじめまして更年期」(青春出版社)が発売したばかり。
NPO法人ちぇぶらホームページ
YouTube「ちぇぶらチャンネル」
「はじめまして更年期」(青春出版社)
著:永田京子 定価:1,540円