皮膚の乾燥・かゆみがひどくなった!...それって更年期のサインかも?

更年期世代の女性に多く見られる症状として、皮膚の乾燥・かゆみがあります。原因は女性ホルモン(エストロゲン)の減少以外にも、紫外線によるダメージ、抗酸化力の低下など、多岐に渡る模様。
そこで今回は、東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュの上島朋子院長に、更年期を迎えた女性の肌の状態や、乾燥・かゆみの原因と治療法、予防の仕方について教えていただきました。
乾燥・かゆみに悩まされる人の特徴とは?
――更年期を迎えた女性は皮膚に乾燥やかゆみが出やすいといわれますが、どうしてでしょうか?
皮膚の乾燥やかゆみの原因はさまざまで、一概に「更年期だから」ということにはなりません。ただ、間接的ではありますが、女性ホルモンの減少が影響しているとはいえますね。
エストロゲンの分泌量が減ると、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の量も減るため、皮膚の保湿力が弱まり、弾力も衰えます。すると、外界からの刺激を受けやすくなり、炎症が起きやすくなってしまうんです。
また、年齢を重ねると、これまで受けた紫外線によるダメージが蓄積されていたり、抗酸化力が落ちて肌の細胞そのものが弱ってきたりすることで、肌トラブルを引き起こすというケースもあります。
――乾燥やかゆみに悩まされる人の傾向はあるのでしょうか?
よくいわれるのが、4つの「しすぎ」――「洗いすぎ」「こすりすぎ」「つけすぎ」「気にしすぎ」です。
洗いすぎ
肌に化粧品などの汚れが残っているんじゃないかと、1日に何度も洗顔する人は乾燥しやすくなります。洗顔によって皮膚のバリアが破壊されてしまうほか、手指の摩擦で肌を傷付けてしまうこともあります。
こすりすぎ
こすりすぎは、メイクやスキンケアのプロセスが多すぎる人に見られます。肌にさまざまなものを重ねてつけるということは、それだけ肌をこすってしまうことになるので、肌にダメージを与えてしまいます。
つけすぎ
保湿のために美容液やクリームを一度にたくさん塗るという人もいると思いますが、そうすると肌の常在菌のバランスが崩れ、炎症の原因になることがあります。また、大量の美容液やクリームが毛穴を詰まらせてしまい、それがニキビや乾燥、かゆみを引き起こすこともあるんですよ。
年齢を重ねると、確かに肌は乾燥しやすくなるのですが、だからといって必要以上につけるというのも好ましくありません。保湿が足りているかどうかは個人差があるものの、スキンケア後に美容液やクリームがついていない手の甲で肌をさわってみて、ちょっと張り付くくらいが理想だと思います。
気にしすぎ
例えば、ほんの小さな赤みを必要以上に気にしてしまう人がいます。それだけでも心と体のバランスが崩れて十分ストレスになりますし、それに気をとられてほかのところのお手入れがおろそかになると、今度はそこにトラブルが発生する...といった悪循環を起こしてしまう場合もあります。
乾燥・かゆみの原因は人それぞれ。診療では問診が重要
――クリニックではどのような診察が行われるのでしょうか?
まずは、視診と問診が基本になります。先程申し上げたように、人によって乾燥やかゆみの原因はさまざま。患者さん自身が思ってもいなかったことが原因になっていることもあるので、特に問診は細かく伺っていきます。
それでも、どうしても特定できない原因がありそうな場合は、悪化時の状況を調べながら的を絞り、ある程度目安がついたところでパッチテストや血液検査を行います。
――治療は、おもにどういったことを行いますか?
診断の結果にもよりますが、基本的には塗り薬です。ただ、無意識にかきむしってしまい、なかなか症状が良くならないという場合は、かゆみを抑える効果のある飲み薬をお出ししたりもします。また、肌そのものの調子を整える目的で、ビタミン剤を出すこともありますよ。
――ホットフラッシュによる汗や熱が、乾燥やかゆみの原因になることもあるそうですが、更年期症状が原因とされた場合、女性ホルモンを整える治療を行うことも効果的ですか?
更年期症状は多彩で、ほかの病気と似た症状が出ることもあるために判断は難しいですが、急激なホルモンの変化をやわらげることで症状が落ち着くこともあります。
保湿をしっかりして、乾燥・かゆみ知らずの肌に
――乾燥やかゆみが気になったときに、日常生活ではどのようなことを行えばいいのでしょうか?
まずは日常生活の環境を見直してみましょう。部屋の湿度が低かったり、1日に何度も体を洗ったり、洗う際に強くこすりすぎるなどの外的な刺激があったりしないか。そういったことに心当たりのある方は、まずそこを整えましょう。
それから、保湿剤をしっかり塗ってみてください。このときは、塗り方や塗るタイミングが大切です。ただなんとなく塗っていると塗りムラができて、塗っていなかったところがかゆくなることもあります。また、カサカサしている部分は広めに塗りましょう。ひじの周囲が乾燥している場合は、ひじを中心に上腕から前腕まで、広く保湿剤をつけてください。
また、塗るタイミングも重要。入浴後、汗をかいているときは少し待って、発汗がおさまってから保湿剤をつけるようにしましょう。
――保湿剤にもいろいろな種類がありますが、選び方のコツはありますか?
最近の保湿剤は、主成分は同じでもクリームタイプや泡タイプ、ミストタイプなど、いろいろな剤形の物が出ています。そのため、自分が好きな触感や使いやすさを踏まえて選んでいただけます。
一般的には、湿度が下がり始める秋以降はクリームタイプ、気温が上昇する5月から夏すぎまでは泡タイプがべたつかず、快適にお使いいただけると思いますよ。
――保湿剤は、乾燥やかゆみがなくても塗っていたほうがいいのでしょうか?
年齢とともに肌の保水力は弱まっていきます。そのため、「私は大丈夫」と思う方も、体のあちこちをさわっていただくと、乾燥しているところと、そうでないところがわかると思います。
肌の状態は全身同じではありません。例えば、ひざ下やひじ、かかとなど、ちょっとカサカサしているなと思ったら、その時点で保湿をしてあげること。それが予防にもつながると思いますよ。
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→東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ
この記事を監修した人

上島 朋子 (かみしま ともこ) 医師
医学博士
専門分野:皮膚科
1992年新潟大学医学部卒業
東邦大学医学部大森病院、栃木県立がんセンター、財団法人鎌倉病院皮膚科部長を経て2016年より東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ勤務、神奈川美容外科クリニックでは10年間非常勤医師として勤務、2018年5月よりノアージュ院長に就任。病理学の研究を経て皮膚科医になった経歴から、「肌」という繊細な臓器をしっかりと見つめ治療・施術を提供することをモットーとする。「肌の健やかな美しさ」にこだわり、疾患の治療から先端美容医療、そして再生医療の研究まで手がける。
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