低体温になる原因、体温を1℃アップさせるための対策とは?

自律神経、免疫、代謝、ホルモンなどに影響を及ぼし、健康面でも美容面でもデメリットが多い低体温。平熱に個人差はあるものの、一般的には36℃を下回ると低体温とされています。
そこで、せんだい総合健診クリニック院長の石垣洋子先生に、低体温がなぜ良くないのかなどについて伺った前回に引き続き、低体温になってしまう理由と、体温を1℃アップさせるための対策について教えていただきました。
美と健康の敵は低体温!体温を少し上げればすべてがWin・Win(前編)
低体温予防に大切なのは「筋肉を鍛える」こと
――なぜ低体温になってしまうのでしょうか?
近年、日本人の平熱は低下傾向にあり、50年前に比べると平均で0.7℃近く下がっているといわれています。その原因の9割は、生活スタイルの変化で運動量が減ったことによる筋肉量の低下です。昔は、掃除や洗濯など、すべてが手作業でしたから、日常的な家事をするだけでもかなりの運動量でした。
それが、電化製品の充実した現代では、人間が体を動かさなくてもほとんどの家事が済んでしまいます。そうすると、当然運動量が減っていきますよね。運動量が減少すれば、それに比例する形で筋肉量も低下します。
筋肉は人体最大の熱生産機関ですから、筋肉が少なくなれば体温も下がり、さらには基礎代謝も落ちてしまうのです。
また、エアコン生活で汗をかきにくくなっていることも原因のひとつでしょう。連日のように猛暑が続く夏は、熱中症予防のためにも上手にエアコンを使うべきですが、依存しすぎるのは良くありません。上手に汗をかく工夫をしないと、脳の視床下部にあり、体温を調整している発汗中枢が作動しなくなって、低体温につながります。
――では、一番の対策は「筋肉を鍛えること」でしょうか?
そうですね。筋肉を鍛えれば体温が上がり、免疫力も上がります。同時に基礎代謝も向上しますから、内臓脂肪をエネルギーとして分解して減らします。
――体温が上がると、免疫力や基礎代謝の向上のほかにもいいことがありますか。
まず、新陳代謝が活発になるので、自然とエイジングケア効果が高まり、若々しさを保つことができます。血液がスムーズに循環するようになりますから、低体温のあいだは隅々まで行き届いていなかった酸素と栄養が補給されます。すると、肌や髪のターンオーバーにもいい影響が出て、くすみ、肌荒れ、抜け毛といった悩みも解決されると思います。さらには、腸のぜん動運動が活発になって、便秘解消の効果も期待できますよ。
ストレスに強く、病気になりにくい体づくりのためにも、体温1℃アップを目指しましょう。
低体温に気付いたら?今日からできる対策
――体温を1℃上げるために、おすすめの対策を教えてください。
運動習慣をつけることはとても大切です。自粛期間があり、在宅ワークも増えたので、最近は、いつでもどこでも、誰でも行えるラジオ体操がおすすめ。かつて学校などで行った記憶のある人も多い「ラジオ体操第一」は、ほんの3分13秒の中に、必要な動きが凝縮されています。
短い時間に400以上の筋肉を使い、たくさんの関節を動かせることに、今あらためて注目しています。体をひねったり、曲げたり、伸ばしたりと、腹部の体幹を刺激する動きが多いので、胃腸をはじめとした内臓の動きを活性化してくれるのもいいですね。
ちなみに、ラジオ体操第一の運動強度(運動時の負荷やきつさのレベル)は4.0METs(メッツ)。これは、卓球やパワーヨガと同じレベルです。血行が良くなったり、代謝が上がったりと「内側からのきれい」にも期待できるので、ぜひラジオ体操第一から一日をスタートしてみてください。
――ラジオ体操第一なら、部屋で気軽にできますね。ほかに、簡単にできて体温アップに効果的な運動はありますか。
スクワットも、家の中で簡単にできる効果的な筋肉量アップの方法です。筋肉を増やしたいなら下半身を鍛えるのが一番の近道ですから、ふくらはぎや太もも、腰の筋肉を一度に鍛えられるスクワットは、とても効率的。ラジオ体操第一と併せて、ぜひ取り組んでみてください。
■スクワットの方法
1. 脚は肩幅に広げ、背筋はしっかり伸ばす。
2. 息を吸いながら、ゆっくりひざを曲げて腰を落とす。背中を丸めずに上半身を前に倒し、ひざがつま先よりも前に出ないよう、お尻を突き出すイメージで。
3. 地面と太ももが平行になるまで腰を落としたら、ゆっくり元に戻す。
4. 1~3を繰り返す。10回を1セットに、無理のない範囲で2~3セット行う。
――生活習慣として、気を付けるべき点があれば教えてください。
忙しい日や暑い日は、お風呂はどうしてもシャワーで簡単に済ませがちですよね。でも、体温を上げて美と健康を維持するには、湯船につかって体を温めることがとても大切です。だいたい10分くらいで、体温が1℃上がります。お湯の中でゆっくり過ごすと、交感神経から副交感神経に変わり、心も体もリラックスしていきます。
また、食事では、体を冷やす食べ物、温める食べ物を知ることも大切です。低体温に気付いたら、レタスやきゅうり、キャベツといった体を冷やす生野菜に偏りがちな食習慣より、にんじんやかぼちゃ、玉ねぎなど体を温める食材を多くとって、体の中から体温を上げていきましょう。
しょうが/にんじん/かぼちゃ/玉ねぎ/山椒/にんにく/長ねぎ/栗/鶏肉/羊肉/納豆ほか発酵食品 など
冬瓜/なす/ごぼう/大根/きゅうり/トマト/白菜/ほうれん草/小松菜/キャベツ/レタス など
低体温の人にこそ心掛けてほしいのは、腸内環境を整えること。毎朝、ヨーグルトにバナナを入れてはちみつをかけたものを食べるだけでも、腸内環境は変わってきます。「健康"腸"寿」生活で、低体温の改善をスタートしてください!
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体温を上げると、いいことがたくさん!
生理不順や更年期症状といった体の不調、さらに肥満や肌荒れ、白髪、抜け毛など、美容面の衰えを感じたとき、その原因を「もしかしたら低体温かも?」と考えられる人は少ないでしょう。体温への関心が高まり、検温の頻度も上がっている今こそ、体温の重要性を知って美貌と健康の敵である低体温を撃退するチャンスです。
まずは、検温を習慣付けて自分の平熱を知り、もし36℃を下回っているときにはすぐに対策を始めましょう。適度な運動と生活習慣の工夫で、「美と健康のための1℃アップ」は素敵な未来を導いてくれます。
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→せんだい総合健診クリニック
この記事を監修した人

石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師
専門分野:内科
1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。
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