更年期以降は肝機能低下に要注意!意識したい「γ-GTP」とは?

更年期以降、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減ると、それまでエストロゲンに守られていた体にさまざまな影響が表れます。これまでと同じ生活をしているのに、なんとなく調子が悪いと感じる日が増えるほか、健康診断の結果で機能が落ちていることを知る場合も多いでしょう。

今回は、健康診断の数値でわかる変化のうち、肝機能に関わる「γ(ガンマ)-GTP」について、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師、古川真依子先生に教えていただきました。

γ-GTPの上昇は、働きすぎた肝臓からのサイン

――以前、ILACY(アイラシイ)で肝臓の疾患についてお話を伺った際、肝機能を表す数値としては「AST(GOT)」や「ALT(GPT)」があると教えていただきました。

そうですね。自覚症状がなく、人間ドックや健康診断でたまたま見つかることが多い自己免疫性肝炎のお話をしたときに、「肝臓がどこまでダメージを受けているか」を見る数値として、AST(GOT)とALT(GPT)をご紹介しましたね。

γ-GTPも同じように、肝臓の状態を知るのに役立つ数値で、具体的には肝臓の代謝機能を確認することができます。「肝臓がどれくらい頑張っているか」を表していると考えると、わかりやすいかもしれません。

γ-GTPの数値だけでも、健康診断などで肝機能障害と診断されることがありますが、それが慢性的なものかどうかは、AST(GOT)やALT(GPT)の数値と併せて確認します。

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――γ-GTPといえばアルコールのイメージがありますが...。

そういうイメージがありますよね。γ-GTPはアルコールの代謝を担って増える酵素なので、「γ-GTPが高い=お酒の飲みすぎ」と考える人が多いのだと思います。

でも、肝臓の役割はアルコールの代謝だけではありません。アルコール以外に糖質、脂質、たんぱく質などの栄養分を代謝して吸収しやすい成分に変えたり、薬やサプリメントから体に悪い物質を取り除いて解毒したりと、さまざまな働きをしています。

ですから、γ-GTPが高いのは、肝臓が一生懸命働きすぎて疲れてしまって、いつもどおりの仕事ができていない状態だといえますね。実際、お酒をまったく飲まないのに、ほかの要因でγ-GTPが高くなっている人もたくさんいるんですよ。

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――γ-GTPが上昇するリスクについて、もう少し詳しく教えてください。

代表的なものは4つあります。


1 アルコール

γ-GTPは、アルコールを代謝することで上昇します。基準値を超えている場合は、摂取量が過剰であると考えられます。


2 薬やサプリメントのとりすぎ

薬やサプリメントも、摂取量が多すぎると肝臓をたくさん働かせることになるので注意が必要です。健康のために飲んでいるサプリが、実は肝臓を痛めつけていたのでは本末転倒ですよね。
薬でもサプリでも、用法・用量を守り、飲み合わせについてはかかりつけ医の指示を受けるようにしてください。


3 脂肪肝

お酒を普段まったく飲まず、飲酒歴さえないような人のγ-GTPが高い場合、肝臓に中性脂肪が溜まる脂肪肝が疑われます。脂肪肝は、栄養バランスの悪い食事や運動不足による太りすぎが一番の原因。
特に、非アルコール性の脂肪肝は、自覚症状がないまま肝炎から肝硬変、肝臓がんへ進むこともあるので、早期発見が大切です。

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4 更年期以降の女性ホルモン(エストロゲン)の減少

女性ホルモンのエストロゲンには、内臓の脂肪燃焼や脂質の代謝を助ける働きがあります。そのため、更年期に入ってエストロゲンの分泌量が減ると、コレステロールや中性脂肪の値が上昇。増えた脂質は肝臓が代謝するので、γ-GTPが上がる原因になります。
急激に増えた中性脂肪が肝臓に溜まり、脂肪肝になって肝機能に影響が出ている場合も考えられます

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基準値内でも、経年で上昇しているようなら注意して

――γ-GTPは、基準値を超えていなければ安心していいですか?

γ-GTPの一般的な基準値は、男性が50IU/L以下、女性が30IU/L以下です。

この数値内に収まっていても、昨年、一昨年と比べてじわじわと上がってきているようなら注意して経過を見たほうがいいですね。生活習慣を変えていないのに3桁に届くような上がり方をしている場合は、できるだけ早く医療機関を受診して、詳しい検査をすることをおすすめします。

女性は、更年期に入ってエストロゲンが減ると病気が増えるので、γ-GTPの変化をきっかけに血液検査で自己抗体を調べたり、おなかの超音波検査で脂肪肝の有無をチェックしたりしておくと安心ですよ。

――数値の異常は、治療すれば改善できますか?

はい。肝臓をきちんと休ませてあげることができれば、γ-GTPの数値は良くなります。高くなってきたなと思ったら、まずは生活習慣を見直しましょう。


お酒の量を控える

過剰な量を毎日飲んでいるなど、明らかに飲酒量が多い場合は、節酒や禁酒で改善が見込めます。


食生活を改善する

脂っこい物や糖分の多い物を避け、バランスの良い食事を心掛けましょう。良質なたんぱく質を多くとるようにするといいですね。

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サプリメントや薬を見直す

γ-GTPが高くて飲酒や肥満などの要因がない場合、飲んでいるお薬やサプリメントを見直します。ある特定の薬が肝臓に負担をかけている場合もあれば、複数の薬を飲み合わせることで副作用が起きている場合もあるので、全体的に見直すといいですね。

たくさんお薬を飲んでいる人は、病院を受診する際にお薬とサプリメントの名前を控えて、先生に確認してもらいましょう。


更年期の側面から治療をする

自己免疫疾患などの病気の可能性がなく、エストロゲンの急激な減少が原因と考えられるγ-GTPの異常は、お薬が処方されることもあります。そのほかの更年期症状があるようなら、エストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)なども効果的です。

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運動をする

肥満は、脂肪肝を招く一番の原因です。見た目はやせ型でも脂肪肝の人は多いので、運動不足を自覚している人や、これまでどおりの生活習慣を続けていても太りやすくなる更年期の人は、意識して運動量を増やすようにしてください。

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――γ-GTPの上昇傾向が見られたら、できるだけ早く生活を見直すことが大切ですね。

その年の健康診断の結果が基準値内でも、経年で見るようにすると緩やかな上昇に早めに気付けるといいと思います。更年期世代は、放っておくとホルモンの減少に肝臓がついていけなくなることがありますので、γ-GTPが上がっていたら肝臓をいたわる生活にシフトしていきましょう。


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SUPERVISERこの記事を監修した人

古川先生

PROFILE

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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