更年期世代のヘルスケアを支える「メノポーズカウンセラー」とは?
女性の心身にさまざまな変化が訪れる更年期のヘルスケアは、老年期のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を大きく左右することがわかっています。
しかし、日本国内の女性医療は臓器別医療が中心で、更年期に生涯の健康を見据えた総合的なヘルスケアをスタートさせることの重要性はあまり知られていません。
そこで活躍するのが、更年期に関わる広範な知識を持ち、医師より身近な立ち位置で相談に応じてくれる「メノポーズカウンセラー」です。
今回は、メノポーズカウンセラー認定事業を行っている「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」の幹事でもある浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生と、先生のすすめで同資格を取得した株式会社アドバンスト・メディカル・ケアの管理栄養士・三浦知代に、メノポーズカウンセラーの役割、産婦人科医から見た必要性についてお話しいただきました。
東京を中心に仙台や名古屋など全国およそ20のクリニックの支援を行う企業。中でも六本木にある東京ミッドタウンクリニックには婦人科や内科をはじめとする、各分野の専門医師が多数在籍しており、医師との共同開発によるサプリメントも数多く扱っています。
メノポーズカウンセラーは、女性の身近なアドバイザー
吉形玲美先生(以下、吉形):これまで、仕事で関わったたくさんの女性にメノポーズカウンセラーの資格取得をすすめてきたのですが、実際に行動に移して資格を取るのはたいへんなことですよね。
三浦知代(以下、三浦):そうですね。先生からお話を伺って学会に参加し、資格の有用性を実感して、さらにメノポーズカウンセラーを増やしたいという先生の思いに共感したことから、勉強を始めました。
資格を取得したのは2019年。更年期症状への対応の仕方、更年期以降のヘルスケア、食事療法、運動療法、漢方、サプリメントについてなど、学ぶ範囲が広いのがたいへんでした。先生は以前から、メノポーズカウンセラーの普及に尽力されていますよね。それはなぜでしょうか?
吉形:メノポーズカウンセラーは、一般の人に近い目線で、女性のヘルスケアについてアドバイスできる貴重な存在です。医療の現場で活躍している人はもちろん、さまざまな職種の方にも取得してもらって、更年期に関する正しい情報を草の根的に広めていってほしいと思っています。
気の置けない女性同士の集まりだと、「最近イライラしちゃって」「ほてりがすごくて」など、病院に行くほどではないけれど何となく気になっている悩みを気軽に打ち明け合うことができますよね?でも、その中に専門の知識を持っている人がいないと、それぞれがさまざまな場所で小耳に挟んだ不正確な情報を教え合って終わってしまいます。
そのような事が重なって、更年期障害に対する誤った認識が広まったり、受診のタイミングを逃してしまったりするのがとても残念だなと思っているんです。
三浦:確かに、友人に話して「自分だけじゃない」と思うことで満足してしまうのは、よくわかりますね。友人からの情報の真偽を確かめることなく、情報に流されてしまいます。
吉形:そうですね。だから、美容師さんやネイリストさん、ヨガの先生など、女性が集まる場所で仕事をしている方がメノポーズカウンセラーになってくれると、立ち寄った人がふと口にした心身の悩みや不安に適切なアドバイスをして、早めのケアや受診につなげられるんじゃないかと期待しています。
メノポーズカウンセラーはどなたでも取得できる資格。いずれ訪れる自分の心身の変化に備えて、資格取得を通じて知識を付けておくのはとてもいいことだと思います。
三浦:この資格が自分のためにもなるというのは、私も実感しているところです。私自身、更年期に差し掛かる世代なのですが、40歳を境に、これまでになかったさまざまな不調を感じるようになりました。
それでも、身に付けた知識のおかげでむやみに不安になることなく、冷静に必要なケアを選択することができています。
同世代の友人にメノポーズカウンセラーという資格を取ったことを伝えると、彼女たちから体調について質問されることも多くなりました。みんな同じように悩んでいるんだなと思いますし、適切なアドバイスで少しでも役に立てたらうれしいですね。
管理栄養士としてショップに立つときも、更年期に悩むすべての女性に寄り添えるように、親身になって情報を提供していきたいと思っています。
自分の体と主体的に関わって、生涯をより豊かに
吉形:これからは、メノポーズカウンセラーの活躍の場所を広げると同時に、「相談したい」と思った女性がすぐメノポーズカウンセラーにアクセスできるしくみを作っていきたいと思っています。
サイト上に、全国各地のメノポーズカウンセラーの居場所と連絡先がわかるようなマップを掲載したらいいかもしれませんね。
三浦:まずは、広くメノポーズカウンセラーの役割と、その存在を知ってもらうことが大切ですよね。私も、今は弊社の広報誌への寄稿や、自分の友人たちへの情報提供がおもですが、少しずつ会社の中から外へ、交友関係の中から外へと情報発信の対象を広げていこうと考えています。
手軽に、スピーディーに多くの人に情報を届けるため、SNSの活用も視野に入れていきたいですね。
吉形:SNSは良さそうですね。更年期障害かもしれない...とクリニックを受診する患者さんの中には、症状が出始めてからかなり長いこと放置していたり、不正確な情報に振り回されたりして、症状も考え方もこじらせてしまっている方がかなりいらっしゃるんです。
そうすると、症状やお悩みを伺いながら一つひとつ誤解を解き、正しい情報をお伝えして、それから診察と診断に移らなければなりません。もちろん、力は尽くしますが、時間的な制約がある医療機関では、どうしても限界があります。
SNSなら、更年期障害の知識がない方や、症状はあるけど医療機関を受診することに抵抗がある方、医師に診てもらうほどではないと思っている方にも情報提供はできます。こじらせてしまう患者さんを少しでも減らすことにつながるかもしれませんね。
三浦:更年期障害の治療というと、投薬を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、実はそれだけではなく、原因に即した生活習慣への配慮が欠かせません。SNSでの情報発信のほか、個々のご状況をうかがって食事や運動の方法をアドバイスすることもできるんじゃないかなと思っています。
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吉形:一人ひとりの女性が、変わりゆく時期を主体的に迎える努力をすることは、更年期以降も続いていく人生をより幸せで豊かなものにするためにとても大切なことです。更年期障害の治療にしても、「医師に相談すれば、きっとなんとかしてくれる」「医師が解決方法を教えてくれる」というように、完全に依存している人より、「自分にできることを教えてほしい」という方のほうが、治りが早いんですよ。
更年期から老年期に向かう自分の体にもっと興味を持って、愛しんでもらいたいですね。メノポーズカウンセラーが、そういう女性たちの先導役になってくれたら、とてもうれしいです。
三浦 知代(みうら ちよ)
管理栄養士/メノポーズカウンセラー
管理栄養士歴20年以上。病院給食業務の経験を経て、入院する前の食生活や栄養摂取の必要性に興味を持ち、サプリメントの企画販促に携わる道へ。
現在は、㈱アドバンスト・メディカル・ケアに所属し、est're<エストール>担当として、女性ホルモンマネジメント®の普及活動を行っている。
est're<エストール>「はじめよう!フェムケアプロジェクト!」マネージャー
est're <エストール> Instagram:
https://www.instagram.com/estre.official
この記事を監修した人
吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師
医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科
1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。