フェムゾーンにも更年期がくる!?女性ホルモンによる体の変化

一生を通じて、女性ホルモンの影響を受け続ける女性の体。女性ホルモンの分泌量はライフステージによって変わり、減少に転じると生活の質を低下させるさまざまな疾患を引き起こします。閉経後のリスクとしてよく知られているものとして、メタボリック症候群や骨粗鬆症、動脈硬化などがありますが、フェムゾーントラブルもそのひとつ。

「フェムゾーンにも更年期が来ることを知って、正しいケアを」と呼びかける浜松町ハマサイトクリニックの婦人科医師・吉形玲美先生に、女性ホルモンとフェムゾーンを含めた体の変化のほか、ケアの仕方などについて伺いました。

フェムゾーンも、女性ホルモンの影響を受けている

――女性ホルモンが女性の一生に深い関係があることは、認知されているのでしょうか。

思春期から性成熟期、更年期、老年期に至るまで、女性のライフステージの変化に女性ホルモンが大きく関わっていることや、閉経後の急激な女性ホルモンの減少が全身疾患のリスクファクターになることは、以前に比べて広く知られるようになりました。

ただ、女性ホルモンの減少に伴うトラブルの中に、更年期障害やメタボリック症候群、骨粗鬆症、動脈硬化といったわかりやすい疾患と並んで「フェムゾーンのトラブル」があることは、あまり知られていません。そればかりか、痛みやにおい、かゆみといった悩みを抱えていても、相談はおろかケアすらしたことがない人が多いんです。

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――フェムゾーンの場合、トラブルと治療が結び付かないのですね。

日本人女性には、フェムゾーンのことを口に出すのは恥ずかしくて、人に話すものではないという意識が根強くあります

しかも、家庭や学校でフェムゾーンケアについて教えてもらう習慣がありません。ほとんどの人が、女性ホルモンとフェムゾーントラブルの関係を知らないまま成長します。そして、日本では専用のケア用品も少ないので、大人になってからケアの必要に気づくチャンスも限られているんです。

たくさんの女性がフェムゾーンの悩みを抱えているはずなのに、ケアや治療といったアクションにつながらないのは、こうした背景によるものでしょう。

フェムゾーンのトラブルは女性ホルモンと関係していて、年齢を重ねたすべての女性に起こりうるもの。「何が悪かったのかな」「どうしてこんな風になっちゃったのかしら」と一人で悩まずに、婦人科を受診していいんですよと、皆さんに伝えたいです。

"フェムゾーンの更年期"を乗り切るには?

――フェムゾーンの悩みは、比較的若い世代の女性にもありますよね。

そうですね。フェムゾーンのお悩みは、次の図のようにライフステージによって変化します。

■ライフステージごとのフェムゾーンの悩み

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若いときは、汗や皮脂の分泌に加え、おりもの量も増えいつも湿っている状態。かゆみやムレ・においの悩みが多いですね。さらに更年期以降は、それまで以上にフェムゾーンの悩みが多くなるのですが、症状にも変化が出てきます。中でも、

・乾燥
・性交痛を含む痛み
・頻尿
・尿もれ

といったことが多いですね。

ほかには、外陰部の皮膚に乾燥や脱毛、炎症、変色が見られることがあります。腟炎が起きていると、おりものがいつもと違ったり、減ったりすることも多いでしょう。これらの症状が現れたら、婦人科を受診していただきたいです。

――更年期以降に、こういったフェムゾーンのトラブルが起こるのはどうしてでしょうか。

女性ホルモンの分泌が十分で正常な状態の腟は、腟粘膜がすこやかな新陳代謝を繰り返しています。

すこやかな新陳代謝とは、グリコーゲンの豊富な腟粘膜がはがれ落ちる際、グリコーゲンがブドウ糖に変わり、さらに腟の常在菌によって乳酸に変わることで、腟内が自浄される状態を維持していること。そして自浄とは、乳酸菌によって腟内が酸性に保たれて、雑菌や病原菌の繁殖を防ぐ働きをいいます。

ところが、女性ホルモンが欠乏すると、腟粘膜のグリコーゲンが減少します。すると、腟のバリアがなくなって自浄作用が低下し、腟粘膜が薄くなって乾燥し始める。これが、萎縮性腟炎と呼ばれる状態。あらゆるフェムゾーントラブルにつながります。いわば"フェムゾーンの更年期"のようなものですね。

■腟粘膜のグリコーゲンと女性ホルモンの関係

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――フェムゾーンにも更年期が来ると考えるとわかりやすいですね。

そうですね。萎縮性腟炎以外にも、子宮を支えている靭帯や骨盤底筋群が緩んで、子宮や膀胱、直腸などが腟から脱出してしまう骨盤臓器脱、脱出はしていないものの臓器が下がっている感覚がある臓器下垂なども、日常生活に支障をきたすフェムゾーントラブルのひとつです。

――では、フェムゾーントラブルを予防・改善することはできるのでしょうか。

まずは、日々のケアを見直しましょう。フェムゾーンの洗浄を適当に済ませていたり、逆にきれい好きが高じて洗いすぎていたりと、間違ったケアがトラブルを助長しているケースが多く見受けられます。

フェムゾーンのケアのポイントは、大きく2つあります。


1 フェムゾーンを洗うときは専用の洗浄料を使う

まずひとつは、フェムゾーンを洗うときはボディソープではなく専用の洗浄料を使うこと。一般的なボディソープは、フェムゾーンには洗浄力が強すぎて、腟を守ってくれる常在菌や必要な潤いまで洗い流してしまう可能性が高いんです。


2 フェムゾーンを洗った後は専用のクリームで保湿する

洗った後は、フェムゾーン専用のジェルやクリームなどでしっかり保護してください。乳酸菌が配合されている物を選ぶと、弱酸性を保ちながら減っていくグリコーゲンの働きを補うことができますよ。

<こちらもCHECK>
フェムゾーンの洗い方は女性の基本知識!医師が教える正しい方法

知識を身につけ、上手に女性ホルモンとつき合おう

――フェムゾーンに関して、どのタイミングで受診したほうがいいのでしょうか。

少しでも「何かいつもと違う」「生活しにくい」と感じる症状が出たら、日常のケアを見直すとともに医師へ相談し、治療を受けてください。また、ILACY(アイラシイ)では、さまざまなフェムゾーントラブルに関する記事を公開しているので、気になる症状がある場合は、こちらも併せてチェックしましょう。

<フェムゾーンの悩みにまつわる記事>
「腟萎縮」はなぜ起こる?閉経後のデリケートな悩みの解消法
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――フェムゾーンのトラブルは婦人科で治療できるということを、多くの女性に知ってほしいですね。

婦人科では、腟内に女性ホルモンを含む腟坐薬を挿入する「エストロゲン局所療法」や、症状が重い場合や複数の更年期症状を併発している場合に選択される「ホルモン補充療法(HRT)」など、フェムゾーントラブルに有効な治療を受けることができます。

あまり知られていないかもしれませんが、女性ホルモンの分泌量が減少することが原因で起こる性交痛も婦人科で治療できるんですよ。症状があっても市販の潤滑ゼリーなどでしのいでいたり、痛みを我慢していたりする人は、ぜひ婦人科を受診していただきたいです。

――性交痛は治療するものと思っていない人もいるので、ぜひ知っていただきたいですね。女性ホルモンとフェムゾーントラブルが密接な関係にあることがよくわかりました。

女性ホルモンとともに生きる女性に知っておいていただきたいことは、次の3つです。

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といったことです。

どんなに健康な体であっても、誰しも年齢とともに女性ホルモンの分泌量は減っていきます。そのように体が変化することはわかっているのですから、正しい知識を身につけて、きたるべき時に備えておきたいもの。上手に女性ホルモンとつき合って、生活の質を下げないケアに努めましょう。


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ハイメディック東京日本橋コース

SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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