閉経前後に多い月経時の大量出血やダラダラ続く月経、その原因は?

40代半ばを過ぎて閉経が近づいてくると、月経の際の出血量に変化が現れることがあります。
中でも多いのが、経血の量が多すぎて生活にも影響が出てしまう「過多月経」。短時間に夜用ナプキンでも間に合わないほどの出血があり、対処に困ったという声も聞きます。
また、出血は少量ながら月経がダラダラ長く続く「過長月経」になる場合もあり、いずれにしても生活の質を下げる不快なものです。

今回は、閉経前後に経血量が変化する理由とその対処法について、浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生に教えていただきました。

2つの女性ホルモンが乱れることで出血異常に

──閉経に近づくにつれ、月経時にこれまでとは違う経血量に悩まされる人が多いと聞きました。

それまで月経時に困ることはなかったのに、急激に量が増えたり、量は少なくても2週間、3週間と長く出血が続いたりする人は少なくありません。月経周期が不規則になり、短い期間に何度も来るケースもありますね。

過多月経の場合は、長時間用のタンポンや夜用ナプキンを使っても、短時間しかもたないほどの出血量に悩む人もいるんですよ。これを放置すると重度の貧血になり、心機能や腎機能の低下、不整脈など、命に関わる疾患を引き起こす危険もあるので、これまでと違うなと思ったら、すみやかに医療機関を受診してください。

――出血量は、なぜ変化するのでしょうか?

女性ホルモンのゆらぎ・減少が原因である場合が多いですね。

そもそも女性の体は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)によってコントロールされています。排卵と月経のサイクルにも、この2つのホルモンが大きく関わっていることはよく知られていますよね。

月経が終わってから排卵までのあいだはエストロゲンが大量に分泌され、排卵から次の月経までのあいだはプロゲステロンが優位になって、子宮内膜を整えながら妊娠に向けた準備を整えます。

■エストロゲン、プロゲステロンの分泌周期

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排卵後、妊娠が成立しなければどちらのホルモンも減り、子宮内膜が血液とともにはがれ落ちる、いわゆる月経が起こるわけですが、40代後半になるとエストロゲンを分泌する卵胞そのもののゆらぎ・減少によって、エストロゲンの分泌量に影響が出てくるんです。

同時に、プロゲステロンの分泌量も変化し始めるため、2つのホルモンのバランスが崩れて子宮内膜がうまくはがれなくなってしまいます。すると、子宮内部に滞留して厚くなりすぎた子宮内膜が一気にはがれて大量に出血する過多月経や、ダラダラと子宮内膜の排出が続く過長月経が起きるのです。

大量出血が起きたら、まずは子宮の病気の有無を調べることが大切

――出血量が多いと、病気かもしれないと不安になりそうですね。

過多月経や過長月経を女性ホルモンの影響と判断するには、子宮に病気が何もないことを最初に確認する必要があります。そのため、出血に対する違和感をきっかけに病気を疑って、医療機関にかかるのはとてもいいことですよ。

――病気による出血だとすると、どんな可能性があるのでしょう。

子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、あるいは子宮体がんなど重大な病気の兆候であることが考えられます。

健診で貧血を指摘され、子宮の検査をしたことでこれらの病気が見つかることもあるので、定期的な健診や適切な受診はとても大切ですよ。

大量出血はあまり該当しませんが、何週間も出血が続く場合は子宮の入り口にポリープができていることも。下着に少量の血液や色の付いたおりものが付着する状態が続くなら、萎縮性腟炎も疑われますね。

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――病院を受診する目安があれば教えてください。

子宮筋腫や子宮内膜症、子宮体がんなどの疑いがなくて、夜用ナプキンが1時間でいっぱいになる日が月経期間中に1日でもあるなら、貧血のチェックや医療機関への受診をおすすめします。

過長月経のほうは少し見極めが難しいのですが、ご自身のこれまでの経験から考えて、明らかに月経が長期化したとか、月経を挟んで2週間以上出血が続くといったときは注意しましょう。

ただ、月経の期間や周期が一般的なパターンと違っていても、それが規則的に繰り返されているなら問題ないことがほとんど。そのことを確かめるためにも、少しでも不安があるときは医師に相談しておくと安心ですよ。

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出血に変化が見られたら、デリケートゾーンケアにも意識を向けて

――女性ホルモンの影響による過多月経・過長月経に対しては、どんな治療が行われますか?

40歳前後の人なら、女性ホルモンの影響で起こる更年期の体調不良を防ぐ意味でも、低用量、または超低用量のピルをおすすめします。

ただし、ピルは年齢が高くなるにつれて血栓症のリスクが上がるため、40代後半から始めるのはあまり望ましくありません。40代後半からはHRT(ホルモン補充療法)を検討しましょう。それ以外では、漢方を使って様子を見る方法もあります。

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――更年期の月経の変化は、自身の体調と向き合うチャンスかもしれませんね。

月経時の経血量や期間などの変化をきっかけに、更年期と上手に付き合っていく方法が見つかるといいですね。併せて、デリケートゾーンとの向き合い方も見直してみると、より快適に毎日を過ごせるかもしれません。

女性ホルモンの減少は、腟の自浄作用を低下させるため、細菌や雑菌が入り込みやすくなります。正しいケアをしないまま大量出血やダラダラ出血が続くと、細菌が増殖してさまざまなトラブルを引き起こす場合があるので注意しましょう。

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月経の出血量が変わってきたら、忙しさにかまけてナプキンの交換をおろそかにしたり、ボディソープでサッと洗い流したりするだけのケアは避けてください。月経のときはもちろん、それ以外のときも、デリケートゾーン専用のソープや保湿剤を使った丁寧なケアを心掛け、トラブルを未然に防ぎましょう

また、すでにデリケートゾーンケア用品を使っている方は、ケア用品の質も見直してみてください。

おすすめは、強すぎない洗浄力で腟内を正常な弱酸性に保ってくれる乳酸菌が配合されているものが良いですね。パッケージに「乳酸菌配合」と記載されているかどうか、一度確かめてみてくださいね。

大量出血やダラダラ出血は、女性なら誰でも経験する可能性があること。適切な対処と正しいケアで、不安定な時期を乗り越えましょう。

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SUPERVISERこの記事を監修した人

吉形先生

PROFILE

吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
産婦人科臨床医として医療の最前線に立ち、婦人科腫瘍手術等を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。
2022年7月「40代から始めよう!閉経マネジメント」(講談社刊)を上梓。
2023年9月より「日本更年期と加齢のヘルスケア学会」副理事長に就任。

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レミ先生の診療日記
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