更年期に入ると、「疲れやすい」「太りやすい」「階段を上るのがしんどい」と感じ始める人は少なくありません。これは、加齢や女性ホルモンの減少による筋力の低下が原因であることが多く、早めに対処して長くすこやかな生活を送れるように備えたいもの。
そこで、ILACY(アイラシイ)では、「40代からの体づくり」として、更年期トータルケアインストラクターの永田京子さんに40代から取り組んでいきたいエクササイズを、3回にわたってレクチャーいただきます。
第1回は、筋力の低下が体に及ぼす影響と、特に鍛えておきたい太ももと腸腰筋(ちょうようきん)のエクササイズ!
筋力の低下がもたらすリスクとは?
――加齢とともに筋肉量はどう変化していくのでしょうか。
筋肉量は加齢に伴って減っていくものですが、女性の場合は50代に入った頃から急激に減っていくといわれています。
■女性の加齢に伴う筋肉量の推移
50歳頃は女性にとって閉経前後の時期にあたり、体が大きく変化します。女性ホルモンの分泌がほぼなくなることで体内のバランスが崩れ、さまざまな不調が起こりやすくなりますが、筋肉量の減少もそのひとつと考えられるでしょう。筋肉の中でも特に、脚の筋肉が減少しやすいんです。
――筋肉量が減ると体にはどのような弊害が起こると考えられますか?
一番のリスクは、将来寝たきりになる可能性があることです。日本は世界有数の長寿国ですが、健康に生活できている期間を示す「健康寿命」は決して長くなく、女性は平均して12年ものあいだを寝たきり、もしくは要介護で過ごすというデータがあります。
■女性の平均寿命と健康寿命の推移
※2016年までの健康寿命は厚生労働省の資料を参照。2019年の健康寿命は厚生労働省「2019年簡易生命表」と「2019年国民生活基礎調査」を使い、厚生労働科学研究「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」による計算方法を用いた概算値
そして、65歳以上で要介護となった人は、筋力が低下したことによって起こる骨折や転倒が原因であることが少なくないんです。
――そういった将来的なリスクを回避するためにも、40代のうちから筋肉量の低下に備えておくことは大切なのでしょうか。
とても大事です。明らかな筋力の低下を感じるのは50代に入ってからだと思いますが、そこでいざ鍛えようと思っても、足や腰が痛くて思うように運動ができないこともあります。
そこで、40代のうちから体を動かしておくことで、将来的なリスクを軽減できるでしょう。また、運動をしている人としていない人とでは、運動している人のほうが更年期を快適に過ごせると考えられているんですよ。
そこで、筋肉の中でも私がマストで鍛えていただきたいと考える、2つの部位のエクササイズをご紹介します。
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を鍛えて筋力と代謝をアップ!
大腿四頭筋は、体の中で一番大きい筋肉。当然、筋肉量も多い一方で、衰えやすい部分ともいわれています。
大腿四頭筋は歩くときに重要な筋肉で、この筋力が低下すると歩けなくなってしまいます。また、大きな筋肉を鍛えることで、代謝が落ちるのを防ぐ効果も期待できますよ。
<大腿四頭筋を鍛えるエクササイズ>
1. 背筋を伸ばした状態で椅子に座り、片足を伸ばす。そのまま10秒キープしてから下ろす。
2. もう片方の足を伸ばして10秒キープし、下ろす。
3. 「1」と「2」を5セットずつ行う。
実際にやってみるとわかると思うのですが、人によって上げやすい足とそうでない足があると思います。だからといって、上げやすいほうばかりやるのではなく、左右バランス良く同じ回数で行うようにしましょう。
ひざを伸ばしきるのがつらい場合は、伸ばせるところまで伸ばした状態で10秒キープする形でも大丈夫です。
大腿四頭筋のような大きな筋肉は、効果が出やすいのも特徴。慣れてきたら、上体を少し後ろに倒してこのエクササイズを行うと、体幹部も同時に鍛えられるのでおすすめですよ。
腸腰筋(ちょうようきん)を鍛えて安定した歩行と正しい姿勢を保つ
上半身と下半身をつないでいる腸腰筋(ちょうようきん)。足を引き上げるときに使う筋肉なので、腸腰筋が弱ると階段やほんのちょっとの段差でつまずいて、転倒することも多いです。
安定した歩行に欠かせないだけでなく、腰痛予防や正しい姿勢を保つために必要な筋肉です。
<腸腰筋を鍛えるエクササイズ>
1. 背筋を正した状態で椅子に座る。
2. 上半身が前傾しないように注意し、ひざを胸に近付けるように左右交互に足踏みをする。
3. 左右10セットを1日5回行う。
慣れてきたら、両手を頭に添えて、上半身をひねる動きを加えてみてください。右ひじと左ひざ、左ひじと右ひざを近付けるように行うと、ウエスト回りの引き締め効果も期待できますよ。
今回、ご紹介した大腿四頭筋と腸腰筋は、歳をとると確実に衰えを感じる部位。もちろん、衰えてからでも筋トレは有効ですが、まだ元気なうちに鍛える習慣をつけることがとても大切です。三日坊主でもOK!また始めればいいんですよ。
ハードな筋トレではありませんので、ぜひこちらのエクササイズを毎日の生活に取り入れてください。
お話を伺ったのは...
永田京子(ながた・きょうこ)さん
兵庫県出身、愛知県小牧市在住。2児の母。東映アカデミーに所属し、役者として舞台やドラマなどで活躍した後、ピラティスや整体、経絡、アロマ、リフレクソロジーなどを学び、ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとしての活動を開始。受講者の声と、更年期障害が悪化して苦しむ母を見ていた経験から、女性ホルモン・更年期の正しい情報と対策を伝えるNPO法人「ちぇぶら」を創設した。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう「the change of life」の意。著書に「女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操」(三笠書房)があるほか、先日「はじめまして更年期」(青春出版社)が発売したばかり。
NPO法人ちぇぶらホームページ
YouTube「ちぇぶらチャンネル」
「はじめまして更年期」(青春出版社)
著:永田京子 定価:1,540円