「健康"腸"寿」――知られざる腸内細菌の力を知ろう(後編)
去る、2019年9月、せんだい総合健診クリニック院長・石垣洋子医師が、腸内フローラと健康長寿の密接な関係について解説したセミナー「きょうから始める健康"腸"寿 ~21世紀は腸の時代~」のレポート後編。
腸内細菌の力にまつわる石垣先生のセミナーを紹介した前編はこちら
今回は、東日本放送「突撃!ナマイキTV」などに出演しているお笑いコンビ・まつトミが登場し、健康に関する素朴な疑問について石垣先生とトークを繰り広げながら、大腸と腸内細菌への理解を深めていった第2部の模様をお届けします。
幼いころからお笑いが身近にあったという関西出身の石垣先生が、まつトミ顔負けのトークで鮮やかに場を盛り上げました!
「腸内細菌」は、予防医療における最先端のキーワード
仙台を拠点に活動するお笑いコンビ・まつトミが、日頃から気になっている腸の健康にまつわる疑問は、多くの女性たちも知りたいことばかりのはず。
腸の健康について、石垣先生がわかりやすく解説してくれた前編の内容を踏まえてこちらをチェックすると、より理解が深まるでしょう。
Q いつも元気で明るく、パワフルなまつトミ。健康のために気を付けていることは?
まっちゃん:やっぱり食事と運動は重要。朝昼晩、寝る前、深夜と食べて、腹筋やウォーキングはいつも「イメージ」しています。イメージトレーニングだけで汗をかくから十分かなと。
石垣先生:イメトレは大事ですが、行動につなげなければ「絵に描いた餅」です。体に返ってくることを、ひとつでもいいから実際にやってみてください。
それから食事は、食べる物よりも食べ方を意識するといいと思います。同じ物でも、食べ方や組み合わせを変えるだけで、体への影響がまったく違うんですよ。
よく「ベジタブルファースト」といいますが、体は最初に体内に入ってきた物から積極的に取り入れようとするので、菌のエサになる食物繊維から先にとるのは、菌を産生させる上でも理にかなった食べ方です。
好きな物から食べるというのではなく、何から食べるといいかを一瞬考えるだけでも、体への影響は変わってくるはずですよ。
トミちゃん:私は、お腹を冷やさないように腹巻きをしたり、大きいパンツをはいたりしていますね。これって、意味があるのでしょうか(笑)?
石垣先生:すごくいいことですよ!低体温は腸内細菌が減る原因のひとつなので、食べ物で内側から、腹巻きなどで外側から腸を温めることはとても重要です。
0.5℃体温が上がれば免疫力が30%上がるともいわれていますから、腸のためにも病気の予防のためにもぜひ続けてください。最近は、かわいい腹巻きもいっぱい出ていますしね。
Q 整腸作用のあるヨーグルトは、菌の違いがあるなど種類が多くて迷いがち。どのように選べばいい?
石垣先生:摂取する菌は何でもいいですよ。ただ、自分に必要な菌を見つけることは重要です。ぜひ一度、ご自分の腸内環境を調べてみることをおすすめします。
2週間ほど同じヨーグルトを食べ続けて、体調を見てもいいですね。ただし、必ず菌のエサになるものをいっしょにとる「シンバイオティクス※」を心掛けてください。また、セミナーの最初にお話ししたエクオール含有のサプリメントは、菌を活性化させる成分もいっしょに入っているので、手軽でおすすめですよ。
腸内フローラを育たるために!「シンバイオティクス」については前編をチェック
トミちゃん:私たちにとって労働と賃金がセットであるように、ヨーグルトやバナナに働いてもらうときにも対価が必要なんですね。
Q まつトミが大腸について普段から意識していることは?
まっちゃん:私は便通がすごくいいんです。食べたら出る。だから、正直大腸のことを気にしたことがなかったですね。出すぎじゃないか、ということくらいで...。
石垣先生:便通の回数や量も大切ですが、形状や中身が重要です。最近はウォシュレットが付いた洋式トイレが増えたため、自分の便をじっくり見る機会は減りましたが、便を見ることは自分の体を知ることにもつながります。便に変化がないか、気になる点がないか、時々チェックしてみてくださいね。
便に限らず、自分で自分の体を知ることは、とても大切なことです。予防医療で大切なのは、人任せにしないこと。国民皆保険である日本では、「病気になったら病院へ行けばいい」と思っている人が多いのが現状ですが、今や医療も「治療から予防」へシフトチェンジしてきています。
体を知れば知るほど、やるべきことがわかってきておもしろいですよ。楽しみながら病気予防にチャレンジしてほしいですね。
Q 日本人に大腸がんなど、腸の疾患が増えている背景には、背景には大腸の劣化がある?
石垣先生:糖質オフダイエットなど、極端な食事制限も原因のひとつですが、私が何より問題視しているのは除菌ブームですね。何でもかんでも除菌しているうちに、体の中で良い働きをしてくれる常在菌まで殺してしまって、外から入ってきたものをすべて敵と認識し、拒絶反応を起こすアレルギーや自己免疫疾患といった病気が増える原因になったのではないかと思っています。
先程のセミナーで腸内フローラについてお話ししたように、菌に必要なのは多様性。多種多様な菌がいれば、外から入ってきた菌と同じものや似たものがいて、「同じだね、仲良くしよう」とうまく作用してくれるんです。
生物の中では後発の人間が微生物に勝とうとすること自体が、大それたことなのかもしれません。この世界の先駆者である微生物と共存共栄することで、病気を減らしていけたらいいですね。
Q 腸内環境の改善は、気付いたときから取り組んでも遅くない?改善にはどれくらいかかる?
石垣先生:もちろん、今日からでも遅くありません。成果を感じるまでの期間には個人差がありますが、毎日の習慣をちょっと意識するだけで確実に変わりますよ。
いつもより速く歩くとか、遠回りして歩く距離を延ばすとか、そうしたちょっとした取組みもプラスアルファとしておすすめです。
あとは、日常の中から愉しみを見つけて、おもしろがって生きていくことも、素敵な腸内フローラを作る上でも大事なことです。私は、ちょっと大変なことや想定外のことが起きたとき、それを「ストレスは人生のスパイス」だと思っています。本当に大切なこと以外は、"腸"いいかげんでいいんですよ。
まっちゃん:"腸"勉強になりました!腸を整えることは、人生の軸を整えることだという気がしてきましたね。
トミちゃん:腸について考えるなんて、この機会がなければ一生なかったと思います。皆さんも、今日からいっしょに腸の中でお花畑を育てましょう!
石垣先生:私は、最前線でがん患者さんを診ていたころ、これだけの先進医療を駆使していけば、必ずやがんは撲滅できると信じていました。しかしながら、現実はがん患者さんが減るどころか、病気もますます多様化していくのを見て...もうこれは病気になってからでは遅いと痛感し、予防医療を志したという経緯があります。
今、私が目指しているのは、「病気を治す医者」ではなく「病気にさせない医者」。そして、病気にならないための重要なキーワードが腸内細菌です。
今日から腸と腸内細菌に目を向けて、より良い腸内フローラを耕し、どんどん幸福寿命を延ばしていきましょう!
少量の便を自宅で採取してポストに投函するだけの簡単な検査で、大腸内に生息している約150~200種類の菌まで解析ができます。
その結果レポートは、なんと計6ページ!管理栄養士からの個別アドバイスも付いていますよ。
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この記事を監修した人
石垣 洋子 (いしがき ようこ) 医師
専門分野:内科
1981年聖マリアンナ医科大学医学部卒業
医療法人社団進興会エスエスサーティクリニック、ソフィア健診クリニック院長を経て、2010年よりせんだい総合健診クリニック院長に就任。がん治療の最前線で治療を続ける中で症状が出てからでは遅い!という悔しい思いから予防医療に力を入れる。 「予防は治療に勝る!」の理念の元、食事、運動といった生活習慣の改善や、健康指導を得意とする。